Rec. 2100

ITU-R勧告BT.2100：ハイダイナミックレンジテレビの国際規格

ITU-R勧告BT.2100（Rec. 2100、またはBT.2100）は、2016年7月4日に国際電気通信連合（ITU）によって発表された、ハイダイナミックレンジテレビジョン（HDR-TV）に関する国際規格です。従来の標準ダイナミックレンジ（SDR-TV）テレビ放送で使われていたBT.1886などとは異なり、Rec. 2100は知覚量子化器（Perceptual Quantizer、PQ）とハイブリッド・ログガンマ（Hybrid Log-Gamma、HLG）という2種類の新しい伝達関数を導入することで、HDR映像の表現力を飛躍的に向上させました。

Rec. 2100は、HDR-TVの様々な技術的側面を包括的に定義しています。具体的には、画面解像度、フレームレート、クロマサブサンプリング、ビット深度、色空間、そして前述の伝達関数といった、HDR映像の基礎となる要素を詳細に規定しています。また、Rec. 2020の色空間規格を拡張する形で策定されており、広色域表現にも対応しています。

技術的側面

伝達関数

Rec. 2100で規定されているPQとHLGは、ディスプレイの輝度レベルと映像信号値の関係性を定義する伝達関数です。

PQ（知覚量子化器）は、人間の視覚特性に基づいて設計されており、広いダイナミックレンジを効率的に表現できます。
HLG（ハイブリッド・ログガンマ）は、SDR互換性を維持しつつHDR映像を表現できる、柔軟性の高い伝達関数です。Rec. 2100では、HLGを用いた場合の公称ピーク輝度は1000 cd/m²と定義されています。背景輝度に応じてガンマ値を調整することができ、柔軟な映像表現を可能にしています。

Rec. 2100では、以下の3種類の伝達関数が定義されています。

電気光伝達関数（EOTF）：非線形な信号値をディスプレイの光出力に変換します。
光光伝達関数（OOTF）：シーンの光をディスプレイの光出力に変換します。
* 光電伝達関数（OETF）：シーンの光を非線形な信号値に変換します。

推奨される視聴環境では、ディスプレイのピーク輝度は1000 cd/m²、黒レベルは0.005 cd/m²以下、周辺照度は5 cd/m²の標準光源D65の中性灰[[色]]とされています。

カラリメトリ

Rec. 2100は、Rec. 2020と同じ広色域の色空間を使用しています。これにより、より鮮やかで自然な色再現が可能です。

解像度

Rec. 2100は、1920 x 1080 (FHD)、3840 x 2160 (4K UHD)、7680 x 4320 (8K UHD) の3種類の解像度をサポートしています。いずれもアスペクト比16:9、正方形ピクセルです。

フレームレート

サポートされるフレームレートは、120p、119.88p、100p、60p、59.94p、50p、30p、29.97p、25p、24p、23.976pです。プログレッシブスキャンのみが許容されます。

ビット深度

ピクセルあたりのビット深度は10ビットと12ビットが規定されており、ナローレンジとフルレンジの両方のカラー値をサポートしています。各ビット深度における黒レベル、無彩[[色]]グレイレベル、ピーク輝度などが具体的に定義されています。また、タイミング基準として使用されるコード値も規定されています。

信号形式

RGB、YCbCr、ICtCpの3種類の信号形式がサポートされています。ICtCpはHDRと広色域（WCG）のために設計された、改良された色表現を提供します。

クロマサブサンプリング

4:4:4、4:2:2、4:2:0のクロマサブサンプリングがサポートされます。輝度信号Y'の生成には、Rec. 2020と同じ係数が使用されます。

Rec. 2100は、HDR映像制作・配信における標準規格として、映像技術の発展に大きく貢献しています。この規格の理解は、HDR映像に関わる技術者にとって必須と言えるでしょう。

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