ICtCp

ICTCP色空間：HDR/WCG映像のための高度なカラー表現

ICTCP（ICtCp、ITP）は、国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)によって定められたBT.2100規格で定義されている色空間です。ハイダイナミックレンジ（HDR）や広色域（WCG）を扱うビデオやデジタル写真のカラー画像処理において重要な役割を果たしており、ドルビーラボラトリーズによって開発されました。

ICTCPの構成と変換

ICTCPは、輝度と色差成分から構成されています。輝度成分であるI（Intensity）は画像の明るさを表し、色差成分であるCT（Tritan）とCP（Protan）はそれぞれ、青-黄と赤-緑の色差を表しています。これらの成分名は、3型色覚異常（トリタン）と1型色覚異常（プロタン）に由来しています。

RGB色空間からの変換は、2つの行列変換と非線形な伝達関数を含む座標変換によって行われます。この変換により、入力されたRGB値からI、CT、CPの3つの信号が生成されます。ICTCPは、Perceptual Quantizer（PQ）方式やHybrid Log-Gamma（HLG）方式のいずれにも対応できますが、特にドルビーが開発したPQ方式との組み合わせで広く使用されています。

ICTCPの利点と特徴

ICTCPは、従来の色空間であるYCbCrに比べていくつかの重要な利点を持ちます。

輝度の一様性: ICTCPは、YCbCrよりも輝度がほぼ一定です。この特性により、クロマサブサンプリングの品質が向上し、圧縮時の画質劣化を抑制できます。
色相の線形性: ICTCPはYCbCrよりも色相の線形性が改善されています。そのため、色再現性が向上し、より自然で正確な色表現が可能です。
圧縮性能の向上: 輝度の一様性と色相の線形性の改善により、ICTCPは圧縮性能が向上します。適応的再構成（adaptive reshaping）と組み合わせることで、圧縮効率を最大10%向上させることが可能です。
高ビット深度と同等の性能: CIEDE2000色差式を用いた評価では、10ビットのICTCPは11.5ビットのYCbCrと同等の精度を持つことが示されています。
* 効率的な色処理: 輝度がほぼ一定であるため、色差情報のみを変更する彩度サブサンプリングや色域マッピングなどの色処理操作を効率的に行うことが可能です。

ICTCPの用途

ICTCPは、高効率ビデオ符号化規格であるHEVC（High Efficiency Video Coding）でサポートされています。HDRやWCGに対応した映像制作や配信において、広く活用されています。

まとめ

ICTCPは、HDR/WCG映像のための高度な色空間として、その優れた特性から注目を集めています。輝度の一様性、色相の線形性、圧縮効率の向上など、様々な利点を持ち、高画質映像を実現するための重要な技術として、今後ますます普及していくことが期待されます。

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