Remember11 -the age of infinity-:無限にループする時間と、解き明かされない謎
『Remember11 -the age of infinity-』は、KIDが開発・発売した
サスペンスアドベンチャーゲームです。
2004年の
PlayStation 2版リリースを皮切りに、
PlayStation Portable、スマートフォンアプリ、PCダウンロード版など、複数のプラットフォームで展開されました。
本作は、『infinity』シリーズの第3作であり、前2作とは大きく異なる
サスペンス色の強いストーリーが特徴です。前作までの恋愛
アドベンチャーゲームの枠組みを脱し、残酷描写やグロテスクな表現を取り入れることで、新たな世界観を構築しています。この大胆な転換は、女性ユーザー層の拡大にも成功しました。
非常に高い難易度と、多くの謎を残したまま幕を閉じる結末は、賛否両論を呼びました。「前衛的」と評価する声がある一方で、未完の作品として批判的な意見も少なくありませんでした。開発者自身も、最後のシナリオが完成していない状態で発売されたことを後に認めています。
複雑に絡み合う物語:ココロ編とサトル編
ゲームは、冬川こころと優希堂悟という2人の主人公の視点から物語が展開されます。2人の意識は、時空間転移という現象によって入れ替わり、それぞれのシナリオ(ココロ編、サトル編)が複雑に絡み合いながら進行していきます。
ココロ編をクリアすることでサトル編がプレイ可能となり、それぞれの選択が互いに
影響を与え合う構造になっています。どちらかのシナリオでバッドエンドを迎えると、もう一方のシナリオでもそれに対応する形でバッドエンドを迎えるという、巧妙なシナリオ設計がなされています。
全てのエンディングをクリアすることで、物語全体を理解するための重要な情報が明らかになる仕組みです。しかし、グッドエンドのみでは、重要な情報にたどり着けません。
解き明かされない謎と、その解釈
『Remember11』は、多くの謎を残したまま物語が終結します。「ユウキドウ計画」の全貌、沙也香の死の真相など、重要な伏線が回収されないまま、プレイヤーに多くの解釈を残しています。
開発者は、全ての情報を提示していないことを認め、未完の作品であるという評価を容認しています。PSP版では、シリーズ年表を追加することで、真相に迫れる情報を提供しようと試みました。しかし、それでもなお、物語の解釈はプレイヤーそれぞれに委ねられています。開発者自身も、「最も納得した真相こそが、あなたにとっての真実」と述べています。
ゲームシステムとグラフィック
前作『Ever17』の反省を踏まえ、テンポの良い展開を目指し、様々な出来事が次々とプレイヤーを待ち受けています。また、KID作品としては初めて、3Dと2Dを融合させたグラフィックを採用。背景を3D、人物を2Dで表現することで、滑らかなカメラワークを実現しています。
作中用語を調べることができる「TIPS」システムは、前作からの改善点として導入されましたが、今度は物語から切り離されるという批判を受けました。しかし、このシステムはメタフィクション的なテーマを持つ本作において、独特の役割を果たしています。TIPSの収集は、隠し要素の出現条件となる場合もあります。
インスピレーションとテーマ
本作の企画は、以前から中澤工が温めていたアイデアをベースにしています。映画『メメント』も着想源の1つであり、「登場人物は救われるが、見ている人間は救われない物語」というコンセプトが反映されています。
すべてのエンディングで表示される「This story has not finished yet. It is an infinity loop!」というメッセージは、物語が無限ループの中に存在することを示唆しています。プレイヤーは、キャラクターたちが仕掛けた「終わりのない復讐の物語」に巻き込まれ、真相を求めて苦悩することになります。
登場人物と設定
主要人物7人には、ユング
心理学の
元型が割り当てられています。この設定は、物語全体が、1人の人間の内面世界を反映している可能性を示唆しています。
主人公のこころと悟は、何度も人格が入れ替わることで、物語にスリリングな展開をもたらします。また、人格交換による性別の変化を強調するために、操作中の主人公の音声と立ち絵も表示されるという工夫が凝らされています。
その他の登場人物も、それぞれに複雑な背景と心情を抱えています。彼らの関係性、そして「セルフ」と呼ばれる超越的存在の存在は、物語の深淵を覗かせます。
まとめ
『Remember11 -the age of infinity-』は、難解な謎、残酷描写、そして衝撃的な結末が特徴の、唯一無二の
サスペンスアドベンチャーゲームです。高い難易度と未完のストーリーという点では賛否両論ありますが、その独特の世界観と謎解きの面白さは、多くのプレイヤーを惹きつけてやまない魅力となっています。様々な解釈が可能なストーリーは、今もなお多くのファンによって語り継がれています。