Routing Information Protocol

Routing Information Protocol (RIP) について



Routing Information Protocol（RIP）は、UDP/IP上で動作するルーティングプロトコルの一つです。主に自律システム（AS）内で用いられるInterior Gateway Protocol（IGP）として機能し、ネットワーク内の経路情報を交換し、最適な経路を選択する役割を担います。

RIPの仕組み



RIPは、距離ベクトル型ルーティングプロトコル（Distance Vector Routing）に分類されます。この方式では、各ルータが隣接するルータと経路情報を交換し、パケットが宛先ネットワークに到達するまでのホップ数（経由するルータの数）を基準に、最適な経路を決定します。具体的には、Distance Vector Algorithm（DVA）というアルゴリズムを用いて、隣接ルータと経路情報を動的に交換します。RIPでは、最大2つの有効な経路を保持し、同一ホップ数の経路が存在する場合は、設定された固定メトリック値に基づいて優先経路を決定します。

ルータは、宛先ネットワークアドレス、次のホップ先のIPアドレス、宛先ネットワークまでのホップ数などの情報をルーティングデータベースに記録し、定期的にこれらの情報を交換します。この情報から有効な経路を抽出したものがルーティングテーブルとして利用されます。

RIPのメリットとデメリット



RIPの最大のメリットは、ネットワーク全体のトポロジーを考慮する必要がないため、計算負荷が非常に低いことです。これにより、計算能力の低いルータでも実装が容易です。また、設定が簡単で、少ないコマンドを覚えるだけで利用を開始できます。

一方、RIPにはいくつかのデメリットも存在します。まず、ネットワーク全体が収束するまでに時間がかかることが挙げられます。さらに、重大な問題として、リンクダウンが発生した場合にCount-to-Infinity問題が発生する可能性があります。これは、リンクダウンした経路のメトリックが無限大に発散し、無駄な経路情報がネットワーク内を流れ続ける状態になる現象です。この問題が発生すると、ネットワーク全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

RIPの歴史的背景と現在



1990年代半ばまでは、計算機の性能が低く、OSPF対応ルータが高価だったため、計算負荷の低いRIPが広く利用されていました。しかし、2000年以降、計算機の性能が向上し、リンクステート型ルーティングプロトコルであるOSPFの計算負荷が問題にならなくなったため、RIPは徐々に使われなくなりました。現在では、RIPは計算資源が非常に限られた環境を除いて、ほとんど使用されていません。OSPFへの移行が進んだことで、Count-to-Infinity問題などのデメリットが解消されました。

ホップ数とメトリック



RIPでは、経路の距離を示す指標としてホップ数が用いられます。RIPv1では、ルータが自身に接続されたネットワーク情報を同一ネットワーク内の他のホストにブロードキャストします。RIPv2では、マルチキャストアドレス（224.0.0.9）宛に情報を送信します。経路情報を受信したホストは、自身のホップ数に1を加算して経路情報を更新します。ホップ数が16以上になると、その経路は無限遠として扱われ、有効な経路としては利用されなくなります。

RIPのバージョンと互換性



RIPには、RIPv1、RIPv2、RIPngの3つのバージョンがあります。
  • - RIPv1: RFC 1058で定義され、ブロードキャストでルーティング情報を交換します。サブネットマスクをルーティング情報に含めることができないため、クラスフルなルーティングプロトコルとして動作します。VLSMやCIDRをサポートせず、不連続ネットワークへの対応に課題がありました。
  • - RIPv2: RFC 2453で定義され、マルチキャストでルーティング情報を交換します。サブネットマスクを含むことができるため、クラスレスなルーティングプロトコルとして動作し、VLSMやCIDRをサポートします。不連続サブネットやNexthopアドレスのサポートも追加されました。
  • - RIPng: RFC 2080で定義され、IPv6環境で使用するためのバージョンです。

現在、主に利用されているのはRIPv2ですが、簡易的な経路制御を実装したルータでは、RIPv1が使用されている場合もあります。RIPのバージョン間には互換性がある程度ありますが、RIPv2で詳細なオプションが指定されている場合は、互換性が低くなる可能性があります。

RIPv2の主な追加機能



RIPv2では、RIPv1の課題を解決するために以下の機能が追加されました。

  • - マルチキャストアドレス（224.0.0.9）によるパケット送信
  • - PlainText認証機能（後にMD5認証、SHA-1,SHA-2認証も追加）
  • - Netmask（CIDR）のサポート
  • - 不連続サブネットへの対応
  • - Nexthopアドレスのサポート

RIPの関連規約



- RFC 1058: Routing Information Protocol
- RFC 2453: RIP Version 2
- RFC 2082: RIP-2 MD5 Authentication
- RFC 4822: RIPv2 Cryptographic Authentication
- RFC 2080: RIPng for IPv6

RIPは、そのシンプルさから小規模ネットワークでは有効なルーティングプロトコルでしたが、現在では、OSPFなどのより高度なルーティングプロトコルに取って代わられています。

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