S級駆逐艦 (2代)

S級駆逐艦について

S級駆逐艦は、第二次世界大戦中にイギリス海軍が建造した駆逐艦の艦級です。1940年度の戦時緊急予算に基づいて建造された第5次戦時急造艦隊に所属し、1943年から1944年にかけて8隻が就役しました。

来歴

第二次世界大戦勃発に伴い、イギリス海軍は駆逐艦の緊急増産に着手しました。当初、O級・P級駆逐艦が建造されましたが、戦訓を踏まえ、より戦時要求に適した設計のQ級・R級へと移行しました。S級駆逐艦は、R級の準同型艦として計画され、1941年1月9日に発注されました。

設計

S級駆逐艦の設計は、Q級・R級とほぼ同様で、単煙突・船首楼型の船型、燃料搭載量の増大、復原性の改善、トランサム・スターンなどを特徴とします。R級の一部で採用されていた艦首傾斜を大きくする設計を全艦に導入し、凌波性の向上を図りました。また、機銃台と探照灯台の配置を逆にするなど、細部の改正や艤装の簡易化も行われました。

機関はQ級・R級と同様に、アドミラルティ式3胴型水管ボイラーとパーソンズ式オール・ギヤード・タービンを搭載し、2軸推進で40,000馬力の出力を発揮しました。

装備

戦間期のイギリス海軍は、駆逐艦の艦砲を両用砲とすることに消極的でしたが、第二次世界大戦の戦訓から両用砲の必要性が認識されるようになりました。当初、S級駆逐艦にはアメリカ海軍の12.7cm砲の導入が検討されましたが、既存設計への適合が困難であったため、従来の45口径12cm砲4門を搭載することになりました。ただし、最大仰角55度のMk.XXII砲架を初採用し、対空射撃能力の強化を図っています。

「サヴェージ」では、1番砲に代えて、バトル級駆逐艦用に開発されていた11.4cm連装砲を搭載し、後部の3番・4番砲塔にも11.4cm単装砲を搭載しました。射撃指揮装置はQ級・R級と同様で、対空用には285型レーダーを備えたMk.II(W)方位盤とFKC射撃盤、対水上用には測距儀を備えたDCT方位盤とAFCC射撃盤が用いられました。

近距離対空兵器としては、当初40mm4連装機銃が予定されていましたが、後に56口径40mm連装機銃と70口径20mm機銃4門に変更されました。これは、オランダ海軍の機雷敷設艦に搭載されていたヘイズメイヤー社製の射撃指揮装置と連動した56口径40mm連装機銃の性能に感銘を受けたためです。ただし、「スコーピオン」には従来の40mm4連装機銃が搭載され、「サヴェージ」「スウィフト」では20mm機銃のみとなりました。他の艦艇では、最大12基までの20mm機銃や、一部の艦では40mm単装機銃も搭載されました。

同型艦

S級駆逐艦は、第二次世界大戦中に2隻が撃沈されました。また、建造中の2隻がノルウェー亡命政府軍に供与され、戦後には3隻がオランダ海軍に売却されました。

S級駆逐艦は、戦時下のイギリス海軍において重要な役割を果たし、その設計は後の駆逐艦にも影響を与えました。対空能力の強化や急造に適した設計は、戦況の変化に対応したものであり、第二次世界大戦におけるイギリス海軍の戦いを支えました。

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