S-300F フォールト

S-300F「フォールト」

S-300F「フォールト」（ロシア語: C-300Ф «Форт», 英: S-300F Fort）は、ソビエト連邦により開発された艦隊防空ミサイルシステムです。このシステムはNATOによってSA-N-6「グランブル」のコードネームで呼ばれており、その輸出バージョンは「リフ」（ロシア語: Риф、英: Rif）として知られています。S-300Fは地上用のS-300Pを艦載用に改良したもので、長距離対応能力と同時に複数の標的を追尾・攻撃する能力を持っています。後には、S-300PMU-1の進化に伴い、S-300FM「フォールト-M」も開発され、このモデルはNATO名でSA-N-20「ガーゴイル」と呼ばれ、輸出用にはリフ-Mという名称がつけられています。

開発の背景

このシステムの開発は1969年に始まりました。ソビエト連邦政府は新しい艦対空ミサイルの開発をアルテア研究所に命じました。陸上型のS-300Pを艦載型にする形での開発が行われました。1976年から1983年にかけて、1134B型大型対潜艦（カーラ型）において試作機の搭載試験が実施され、1984年には公式に海軍に引き渡されました。

システム構成

S-300Fは主に以下のサブシステムから成り立っています：

ミサイル射撃指揮装置（GMFCS）

当初、「アゾフ」に搭載された時には試作機材として名前が付けられていませんでしたが、後に3R41（3Р41）と呼ばれるようになりました。この装置はNATOでトップ・ドームと呼ばれ、半球状のレドームを用いたフェイズド・アレイ・アンテナを備えています。このレーダーは同時に12目標を追尾でき、そのうち6目標を攻撃可能です。設計によると、1164型艦においては3基の3P41型を固定装備することで長距離捜索レーダーや3次元レーダーを不要にできるとも言われていました。また、フォールト-Mやその輸出型では、平面アンテナを採用した30N6Eに変更されています。

垂直発射装置（VLS）

「アゾフ」ではPU-203が、スラヴァ級以降ではB-204が用いられています。この発射システムは、アメリカのMk.41とは異なり、8連装のリボルバー式を採用しています。コールド・ランチ方式によって、ミサイルはコールド・ガスで発射機から放出され、その後空中でロケットモーターに点火されます。この設計は発射時の高温ガスによる発射機への損傷を防ぎますが、発射機の構造が複雑化し、発射速度が若干低下する欠点もあります。

艦対空ミサイル（SAM）

最初は5V55RMが採用されました。このミサイルは、陸用のS-300PS向けに開発された5V55Rを艦載化したもので、その運用が先行して開始されました。後に、射程と射高が拡大され、高速化された48N6Eが実用化され、最大でマッハ9の目標とも交戦可能になりました。また、その派生型として、より射程が延びた48N6E2も開発されました。これはさらに大型化したため、従来のシステムでの運用は難しくなり、対応する新たなシステムがS-300FM「フォールト-M」として登場しました。

搭載艦

S-300Fシステムは以下の艦船に搭載されています。

• - ソビエト連邦海軍 / ロシア海軍: 1134BF型大型対潜艦（カーラ型）、1144型重原子力ミサイル巡洋艦（キーロフ級）、1164型ミサイル巡洋艦（スラヴァ級）
• - 中国人民解放軍海軍: 051C型駆逐艦

このように、S-300F「フォールト」は、艦船向けに設計された優れた防空能力を持つミサイルシステムとして、さまざまな艦艇に搭載されています。その技術と設計は、今もなお多くの国によって採用されています。

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