S21 (トゥール・スレン)

S21：クメール・ルージュの恐怖の収容所

S21はカンボジア、特にプノンペンのチャムカモン区に設けられた政治犯収容所です。この施設は、クメール・ルージュ政権下で約2年9か月に渡り運営され、推定で14,000から20,000人の囚人が収容されましたが、わずか8人だけが生還しました。

正式な名称は存在せず、一般にはトゥール・スレン（毒の木の丘の意）という地名から名付けられました。トゥール・スレン虐殺犯罪博物館として現在も観光地となり、当時の悲劇を記憶し続ける重要な場所となっています。

歴史的背景

1976年、クメール・ルージュは学問を否定し、無人となったトゥール・スヴァイ・プレイのリセを政治犯の尋問施設に改造します。この施設には、他にも数ヶ所で運営されていた収容所からも反革命分子が集められ、尋問が行われました。セルビアやベトナムからの支援が減少するにつれ、看守たちは次第に残虐行為を増大させ、囚人の多くが強制的な「自白」を求められる状況に陥りました。

囚人たちは看守が求めるような回答をしなければ、拷問に直面することになり、それがさらなる悲劇を生み出しました。「アメリカの手先」や「ベトナムのスパイ」としての自白が強要された結果、多くの無実の人々が処刑されました。拷問や処刑の様子は文書や写真として記録され、施設の中に残されました。

拷問と殺人の悪循環

S21では、有罪が決まっていない囚人に対しても一度収容されたが最後、拷問によって無理やり自白を強いられることが常態化しました。ここでの拷問は異常性を増し、ナチスの強制収容所と共通する点が多く見受けられます。囚人の生存はほぼ不可能であり、その中で「反革命分子」と見なされた人々が急速に増え続けました。

当初はサバイバルのために他の仲間の名前を挙げることが余儀なくされ、その流れがまた新たな犠牲者を生み出す結果となりました。このダークサイクルは、クメール・ルージュの末期においても続きました。

S21の終焉

1979年、ベトナム軍がプノンペンを制圧する際にS21の存在が明らかになります。発見された際の地獄のような状況は、国際社会に衝撃を与えました。ベトナム政府はこの施設の惨状を宣伝材料とし、過去のクメール・ルージュの残虐行為を広く知らせる機会を持ちました。また、この施設は今も現在のカンボジアにおける重要な歴史的教育の場となっています。

現在の状況

トゥール・スレン博物館では、収容者の写真や当時の拷問室が保存され、訪問者にその悲劇を伝え続けています。これらの展示物は2003年にユネスコの記憶遺産に登録され、今もなお人々の記憶から消えることはありません。また、ドッチと呼ばれるS21の指揮官も後に裁判にかけられ、禁錮刑の判決が下されました。

入場料金は手頃に設定されています。オーディオガイドも用意されており、訪問者はより深くこの悲劇を学ぶことができます。映画の上映や様々なイベントを通じて、今なおその記憶を広めています。待っている人々の前で余韻を残し、負の歴史を繰り返さないために、トゥール・スレンは未来へ向けての警鐘を鳴らしています。

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