S7航空778便着陸失敗事故

S7航空778便着陸失敗事故

S7航空778便着陸失敗事故は、2006年7月9日に発生した航空事故です。モスクワ発イルクーツク行きのS7航空778便（エアバスA310、機体記号F-OGYP）が、イルクーツク国際空港への着陸に失敗し、多数の犠牲者を出すこととなりました。

事故の概要

事故が発生したのは現地時間7時50分頃。S7航空778便は、モスクワからの国内定期便として運航されていました。事故機であるエアバスA310（F-OGYP）は、第1エンジンの逆噴射装置が、運用許容基準の要件に沿って不作動の状態で飛行していました。

イルクーツク国際空港への着陸進入までは特に問題は見られず、滑走路30への着地も正常に行われました。着陸後、機長はスポイラーを展開し、第2エンジンの逆噴射を作動させました。しかし、フライトデータレコーダーの記録によると、第2エンジンの逆噴射レバーを戻した際、誤って第1エンジンのスロットルレバーを離陸推力位置まで動かしてしまったのです。これにより、推力が増加し、スポイラーとオートブレーキが解除され、機体は加速を始めました。

機体の左側に位置する第1エンジンの推力が増加したため、機体は滑走路を右方向へ逸脱し始めました。機長は左方向舵ペダルとブレーキを踏み、副操縦士は第2エンジンの逆噴射を作動させましたが、機体を停止させることはできませんでした。機体は滑走路を飛び出し、最終的に柵に衝突し、第1エンジンが脱落。その後、コンクリート製のガレージに激突し、炎上しました。

事故当時、機内には195名の乗客と8名の乗員が搭乗していました。このうち、125名が死亡し、乗員3名と乗客75名が救助されました。

事故原因

事故調査の結果、事故の直接的な原因は、機長の操作ミスであると断定されました。着陸後、第2エンジンの逆噴射レバーを戻す際に、誤って第1エンジンのスロットルレバーを動かしてしまったことが、事故を引き起こした主な要因です。また、副操縦士が速度計やエンジン計器の数値を読み上げなかったことも、機長が誤操作に気づくのが遅れた一因とされています。副操縦士が適切な数値読み上げを行っていれば、事故は回避できた可能性が高いと考えられています。

事故機の履歴

事故機であるエアバスA310は、1987年に製造され、当初はパンアメリカン航空に納入されました（製造番号442、登録記号N812PA）。しかし、1991年にパンアメリカン航空が倒産した後、デルタ航空に移籍し、1995年まで使用されました。その後、エアバス系のリース会社に売却され、1996年からはアエロフロート・ロシア航空が使用。2004年からは、シベリア航空（後のS7航空）にサブリースされていました。

この事故は、パイロットのヒューマンエラーが重大な事故に繋がることを改めて示唆する事例となりました。

関連項目

航空事故
国家間航空委員会
* TAM航空3054便オーバーラン事故

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