SABRINA HEAVEN

thee michelle gun elephantの最終章を飾る傑作『SABRINA HEAVEN』

2003年3月5日、日本のロックシーンに衝撃が走った。伝説的なバンド、thee michelle gun elephantがその活動を休止し、同日にリリースされたのが7枚目のアルバム『SABRINA HEAVEN』である。本作は、バンドのキャリアにおける重要な位置を占める、集大成的作品と言えるだろう。

解散という節目の年に発表された本作は、活動休止期間を経て制作された。そのサウンドは、これまでのthee michelle gun elephantの音楽性を継承しつつ、新たな深みと成熟を見せ、バンドの後期音楽性を象徴する作品となっている。特に、チバユウスケ（Vo./Gt.）は、音楽番組『JAPAN COUNTDOWN』のインタビューで本作を聴いた感想を「まだいけるなと思ったもん」と語っており、その自信と充実感がうかがえる。

興味深いのは、同年6月にリリースされた『SABRINA NO HEAVEN』との関係性だ。両アルバムはほぼ同時期にレコーディングされ、対を成す作品として位置付けられている。さらに、ジャケットに描かれた車のナンバープレートには、両アルバムの再生時間の合計が記されているという隠された仕掛けがある。

『SABRINA HEAVEN』には全10曲が収録されているが、これはバンドのオリジナルアルバムの中では最も少ない楽曲数だ。しかし、その分、楽曲の一つ一つに重厚感があり、6分を超える長尺の曲が4曲も含まれている。そして、アルバム発売前のツアーやライブで既に披露されていた楽曲も多く、ファンにとっては聴き馴染みのある曲も多いだろう。

アルバムのハイライトと言えるのが、「ブラック・ラブ・ホール」、「ブラッディー・パンキー・ビキニ」、「マリオン」の3曲だ。これらの楽曲はミュージックビデオが制作され、視覚的にも楽しめる作品となっている。

各楽曲の詳細を見ていこう。まず「ブラック・ラブ・ホール」は、アルバムの中でも特に激しい楽曲の一つで、後期のライブでは頻繁に演奏されていた。一方、「太陽をつかんでしまった」は、本作からの唯一のシングルカットで、アルバムの中でも代表的な曲の一つと言えるだろう。

「ヴェルヴェット」や「メタリック」といった楽曲も、バンド特有の独特なサウンドが際立つ。また「マリアと犬の夜」は、『WILD WILD SABRINA HEAVEN TOUR』ではチバがキーボード、クハラカズユキ（Gt.）がトランペットを演奏するなど、ライブパフォーマンスも記憶に残るものだった。

「ジプシー・サンディー」や「マリオン」も、聴き応えのある楽曲だ。「マリオン」は、ジャズテイストのイントロから一転、激しいギターリフへと展開するダイナミックな構成が特徴で、曲中のトランペットはクハラによるものだ。この曲は、前作『ロデオ・タンデム・ビート・スペクター』の発売日に代々木公園で行われたフリーライブ「TMGE YOYOGI RIOT」で既に披露されていたが、その時点では歌詞がワンフレーズしかなかったという逸話も残っている。

そして、アルバムを締めくくるのはインストゥルメンタル曲「NIGHT IS OVER」だ。この曲では、チバがピアノを演奏しており、後にシングルカットされた「Girl Friend」の原曲として知られている。

『SABRINA HEAVEN』は、thee michelle gun elephantのキャリアの集大成であり、彼らが残した数々の名曲の中でも特に重要な位置を占める作品だ。解散という事実を抜きにしても、その音楽性、楽曲のクオリティ、そして、そこに込められた情熱は、リスナーの心に深く刻まれるだろう。このアルバムは、バンドの軌跡を辿る上で必聴の一枚であることは間違いない。

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