SAMURAI (アルバム)

長渕剛17枚目のオリジナルアルバム『SAMURAI』：多様な音楽性と高い人気を誇る作品

1998年 10月14日、日本の国民的歌手、長渕剛の17枚目のオリジナルアルバム『SAMURAI』がフォーライフ・レコードよりリリースされました。前作『ふざけんじゃねぇ』から約1年ぶりとなる本作は、長渕剛自身による作詞・作曲、そして長渕剛と笛吹利明による共同プロデュースという体制で制作されました。レコーディングは日本国内で行われ、その音楽性は長渕剛のこれまでの作品に見られるフォークソングをベースとしながらも、ラップ、音頭、唱歌、童謡、さらには長唄といった、日本の伝統音楽にまで及ぶ多彩な要素を取り入れています。加えて、コミカルな要素を含む楽曲も収録されており、聴く者を飽きさせない、バラエティに富んだ内容となっています。

アルバム制作の背景：全国ツアーと先行シングルのリリース

『SAMURAI』の制作背景には、精力的な活動が見て取れます。前作『ふざけんじゃねぇ』のリリース後、長渕剛は1997年11月から1998年2月にかけて、全国16都市27公演の大規模なライブツアー「LIVE'97 - '98 ふざけんじゃねぇ」を開催しました。ツアー開催中、旧所属事務所である東芝EMIからは、長渕剛のシングル曲を集めたベストアルバム3部作がリリースされるなど、精力的な活動を続けていました。

その間、1998年7月には、盟友である歌手、日高正人への提供曲としてシングル「想い人」がリリースされています。この曲は、日高正人の歌声に感銘を受けた長渕剛が以前から書き溜めていた曲で、日高の病気療養のために長らくお蔵入りとなっていた楽曲でした。そして9月23日には、本作からの先行シングルとして「指切りげんまん」がリリース。この曲は、テレビ朝日系で放送されたテレビドラマ『外科医・夏目三四郎』の主題歌として使用され、長渕剛が出演していないドラマとのタイアップとしては、「友よ」以来2度目の事例となりました。

音楽性：伝統と革新の融合、そしてユーモア

『SAMURAI』の音楽性は多様性に富み、専門誌による評価からもその独自性がうかがえます。例えば、「Never Give Up」は、和太鼓をイントロに用いた、長渕剛独特の音楽性と伝統的な音頭を融合させた楽曲だと評されています。「お釈迦さま」は、そのコミカルな明るさから、煩悩を笑い飛ばすような心境を表しているとも解釈されています。「ふるさと」は、長渕剛の幼少期の故郷を想起させる、ノスタルジックな要素と、力強いメッセージ性を兼ね備えた楽曲として高く評価されています。「猿一匹、唄えば侍」は、軽妙な歌詞とアレンジが特徴的な一曲であり、アルバム全体の音楽的な幅広さを象徴する存在となっています。専門誌では、ラップミュージックの手法を取り入れた楽曲や、長渕剛の音楽性において、従来は見過ごされてきた側面が本作で顕著に現れていると指摘する声もありました。

リリースとアートワーク：CDとカセットテープの2形態で発売

『SAMURAI』は、1998年 10月14日にCDとカセットテープの2形態でリリースされました。ジャケット写真は、長渕剛の左目のアップが用いられ、ライナーノーツは脚本家の倉本聰が執筆しています。歌詞カードやジャケットに写る長渕剛の衣装は、西南戦争における薩軍の陣羽織で、歴史的な要素も取り入れられています。

コンサートツアーとアクシデント：ツアー中断の苦渋の決断

アルバムリリース後には、「LIVE'98 - '99 SAMURAI」と題したコンサートツアーが開催されましたが、1999年5月からのツアーは、長渕剛が筋力トレーニング中の事故により右腕を負傷したため、全公演の中止を余儀なくされました。これは「LIVE'85 - '86 HUNGRY」、「LIVE'94 Captain of the Ship」に続く3度目の中断となり、多くのファンに大きな衝撃を与えました。

批評：多様な音楽性とユーモアの共存が評価される

音楽情報サイトや専門誌からは、『SAMURAI』に対して好意的な評価が多く見られました。力強さとユーモアが共存する音楽性、幅広いサウンド、そして日本の伝統音楽を取り入れる試みなどが称賛されています。特に、「猿一匹、唄えば侍」や「ふるさと」、「くちづけ」といった楽曲は、高い評価を受けています。また、長渕剛の独特の歌詞表現や歌唱方法も、高い評価を得ています。

チャート成績：オリコン1位を獲得

『SAMURAI』はオリコンチャートで最高位1位を獲得し、約21万枚のセールスを記録しました。これは、長渕剛の高い人気とアルバムの質の高さを示す結果と言えます。

収録曲：多様な楽曲群

『SAMURAI』には全11曲が収録されており、それぞれの楽曲が独自の個性と魅力を持っています。その中には、ドラマ主題歌となった「指切りげんまん」や、長渕剛の子供たちのコーラスが参加した「俺たちの心にジングルベル」、そして長渕剛の故郷を歌った「ふるさと」など、バラエティに富んだ楽曲がラインナップされています。さらに、ライブでは未だ演奏されたことのない楽曲も含まれており、長渕剛の音楽的深さと探究心が感じられます。楽曲制作には、多くのミュージシャンやスタッフが参加しており、そのチームワークがアルバムの完成度に繋がっています。

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