SCUBA (P-MODELのアルバム)
P-MODEL『SCUBA』：ポップと実験性の融合
P-MODELの番外スタジオアルバム『SCUBA』は、1984年にJICC出版局からリリースされました。その後、1989年にはキャプテンレコードから再編集されたCD版が登場。さらに1995年には、ディスクユニオン内のレーベルDIW/SYUNからリメイクアルバム『SCUBA RECYCLE』が発表されました。
解説
『SCUBA』は、それまでのP-MODELのヘヴィな路線から一転、ポップな曲調が特徴的な作品です。楽曲制作とレコーディングはほぼ平沢進が単独で行い、参加メンバーは三浦俊一のみ。菊池達也はレコーディング途中で解雇され、田井中貞利の脱退も決まっていたため、ベースとドラムのパートは平沢がKORG PolysixとKORG KPR-77を用いて制作しました。
本作はP-MODELのオリジナルアルバムとしてはカウントされないことが多いものの、その作風やテーマは後の平沢ソロ作品に大きな影響を与えています。アルバムのテーマは「全き人格の回復」であり、平沢ソロの8thアルバム『救済の技法』にも引き継がれました。
収録曲「FROZEN BEACH」の歌詞に登場する「科学と祈りの狭間」は、平沢ソロの初期3作品（1stアルバム『時空の水』、2ndアルバム『サイエンスの幽霊』）のテーマとなっています。これらのアルバムには、「FROZEN BEACH」や「FISH SONG」のセルフカバーが収録されています。
リリース形態
2002年発売のボックスセット『太陽系亞種音』には、以下の3つのバージョンが収録されています。
カセットブック版: オリジナルバージョン。「SCUBA物語」というブックレットが付属し、平沢が見た夢を基にした物語やカラー写真が掲載されています。
CD版: 音質が改善されたリミックス版。「LOOPING OPPOSITION」の遠藤ミチロウによるナレーションがカットされ、「FROZEN BEACH」と「FISH SONG」は再録されています。ブックレット「SCUBA物語」は付属せず、平沢によるCD化の挨拶がライナーノーツに掲載されています。
SCUBA RECYCLE: 『SCUBA』の全収録曲を再編曲したリメイクアルバム。新たなブックレットが付属し、「SCUBA物語」の元となった平沢の夢日記や本作をイメージしたアートワークが掲載されています。
収録曲について
FROZEN BEACH: 『SCUBA RECYCLE』版は、1991年リリースの「デトネイター・オーガン 1 誕生編」に収録された「YOHKO Mitsurugi」を元にアレンジされています。
BOAT: 平沢によると、「イントロのサンプリングボイスに合わせてキーを決めたため、音域が低く歌い辛い」とのこと。2011年には歌詞が大幅に書き換えられ、弦楽器を主体としたアレンジで「ステルスマン」によってカバーされました。
七節男: 1987年に発売されたグッズセット『entro Pack』に、平沢によるリミックスバージョンが収録されています。
オハヨウⅡ: 『LANDSALE』収録曲の別解釈版であり、歌詞が一部変更されています。
LOOPING OPPOSITION: MANDRAKE時代に演奏していた「奇妙なタマゴ」が原曲。1992年のツアー『能率の予感』以降演奏されていませんでしたが、2020年の「平沢進＋会人（EJIN）」名義のライブ『会然TREK 2K20▲03』でアレンジと歌詞が変更され披露されました。カセットブック版には、遠藤ミチロウのナレーションが収録されています。
REM SLEEP: 2023年に三浦俊一がmiuratron名義でセルフカバーし、Bandcampでリリースしました。
FISH SONG: 1987年発売のカセットブックマガジン『Hi'lde Vol.3』に別バージョンが収録されています。キーボードパートの難易度が高く、三浦はミスタッチを防ぐためにボールペンのキャップを指に嵌めて演奏していたとのこと。2014年には、平沢の下でAmigaを学んでいた秋元きつねが"Spiky Spoon"名義でカバーバージョンをSoundCloudに公開しました。
参加ミュージシャン
平沢進 - ボーカル、ギター、シンセサイザー、ドラムマシン、サンプラー、プログラミング
三浦俊一 - シンセサイザー
神尾明朗 - シンセサイザー（「FISH SONG」）
辻谷朱美 - コーラス（「BOAT」）
* 遠藤ミチロウ - オープニングヴォイス（「LOOPING OPPOSITION」）カセットブック版のみ
『SCUBA』は、P-MODELのディスコグラフィーの中でも特異な作品であり、平沢進の音楽性を深く理解するための重要な要素と言えるでしょう。
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