SEA BREEZE 2016

角松敏生『SEA BREEZE 2016』：デビューアルバムの新たな息吹

2016年3月16日、角松敏生はデビュー35周年を記念する第一弾作品として『SEA BREEZE 2016』をリリースしました。これは1981年に発表された自身のデビューアルバム『SEA BREEZE』を、現代の技術と表現力で再構築したリテイク＆リミックスアルバムです。

オリジナルへの敬意と現代の技術

本作は単なるリマスターではなく、オリジナルのアナログ・マルチ・トラックテープをデジタル・アーカイブ化。当時の貴重な演奏トラックをそのままに、ボーカル、コーラスパートを2016年当時の角松敏生が再レコーディングすることで、35年の歳月を経たアーティストの進化と、オリジナル楽曲への深い敬意を表現しています。

ジャケット写真は、デビュー当時の写真をベースに、角松敏生本人が「当時こう表現したかった」という色合いに修正。ブックレットには、角松敏生自身のセルフ・ライナーノーツが収録されており、楽曲制作当時のエピソードや、リテイク作業におけるこだわりなどが語られています。ブックレット内面およびアーティスト写真は、2001年リリースの20周年記念シングル「心配／YOKOHAMA Twilight Time」でも使用された神奈川県葉山町の洋菓子店「パティスリー・ラ・マーレ・ド・チャヤ」のオープン・テラスで撮影されました。

各楽曲へのこだわり

全曲において、ボーカルやコーラスが再レコーディングされただけでなく、アレンジ面にも変更が加えられています。例えば「Dancing Shower」では、オリジナルのSEがすべてカットされ、新たなコーラスが追加。「Elena」では、本田雅人によるソプラノ・サックス・ソロが追加され、エンディングがより華やかになっています。さらに、デモ段階ではバラードだったこの曲は、軽快なアレンジに変更されている点もポイントです。「Summer Babe」ではフェードアウト後のインストパートが延長され、「YOKOHAMA Twilight Time」では、当時実現できなかったアコースティックギターの間奏がサックスソロに変わっています。これは角松敏生自身の強い希望で実現した変更点で、楽曲への深い愛情が感じられます。「City Nights」では、コーラスの録り直しにより、より艶のある表現が実現。「Still I'm In Love With You」では、鈴木茂のバッキングギターの音量を上げることで、楽曲全体のバランスが改善されています。

初回生産限定盤の特典

初回生産限定盤には、ボーナス・トラックとして「Last Summer Station」が収録されています。これは17歳の角松が作った未発表曲で、当時の技術では収録できなかったためお蔵入りしていましたが、今回新たにボーカルがレコーディングされ、日の目を見ました。さらに、光学式マスター・レーザー・ターンテーブルを使用して、ファンから借用した未使用アナログ盤を読み取りリマスタリングしたCDも同梱されています。これは世界初の試みとして、大きな話題を呼びました。

まとめ

『SEA BREEZE 2016』は、単なる過去作品のリメイクではなく、角松敏生自身のアーティストとしての成長と、デビュー作への深い愛情が凝縮された作品です。オリジナルの良さを残しつつ、現代的なサウンドと表現力で再構築された楽曲たちは、リスナーに新鮮な感動を与えてくれます。35年の時を超えて蘇った『SEA BREEZE』は、角松敏生の音楽史における重要なマイルストーンと言えるでしょう。

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