SOHO (探査機)

SOHO（太陽・太陽圏観測機）について

SOHO（Solar and Heliospheric Observatory）は、欧州宇宙機関（ESA）とアメリカ航空宇宙局（NASA）が共同で開発した太陽観測衛星です。1995年12月2日に打ち上げられて以来、20年以上にわたり太陽観測を継続しており、その観測データは科学研究だけでなく、宇宙天気予報にも重要な役割を果たしています。SOHOは、太陽風などの宇宙天気予報を行うための主要なデータ源として、ほぼリアルタイムで情報を提供しています。

軌道と通信

SOHOは、地球から150万km離れた太陽-地球系のラグランジュ点L1近傍に位置しています。この位置は、太陽と地球の重力が均衡する点で、SOHOはL1を焦点とするハロー軌道を周回しています。この軌道により、SOHOは太陽を常に観測することができ、同時に地球との安定した通信環境を維持しています。通常、SOHOは200kbpsの速度で観測データをNASAの深宇宙ネットワークに送信しています。L1に位置することで、太陽からの放射による通信障害を避けることができます。

観測データとその活用

SOHOが取得するデータは、太陽フレアの発生予測に利用されています。太陽フレアの高エネルギー粒子は、通信衛星や人工衛星に損害を与える可能性があるため、SOHOのデータはこれらの損害を未然に防ぐ上で非常に重要です。2003年には主アンテナの故障が発生しましたが、ESAとNASAの技術者たちの努力により、二次アンテナと地上局の連携、およびSOHOの記録装置の活用によって、データ損失を防ぐことに成功しました。現在では、3ヶ月ごとに通信速度が低下する程度の影響にとどまっています。

SOHOの主な目的

SOHOの主な目的は以下の3つです。

太陽の表層部の観測: 彩層、遷移層、コロナなど、太陽の表層部を詳細に観測します。CDS、EIT、LASCO、SUMER、SWAN、UVCSといった観測機器が用いられます。
太陽風と関連現象の観測: 太陽風や、それに伴う現象を、ラグランジュ点L1近傍で観測します。CELIASとCEPACが測定に用いられます。
日震学による太陽内部構造の観測: 太陽の振動を観測し、その内部構造を調査します。GOLF、MDI、VIRGOが測定に使用されます。

搭載観測機器

SOHOには、以下の12個の観測機器が搭載されています。それぞれの機器が独立して太陽に関する測定を行っています。

CDS (Coronal Diagnostics Spectrometer): コロナの密度、温度、流速を測定。
CELIAS (Charge ELement and Isotope Analysis System): 太陽風のイオン組成を測定。
COSTEP (COmprehensive SupraThermal and Energetic Particle analyser collaboration): 太陽風のイオン、電子組成を測定。ERNEと相互参照を行う。
EIT (Extreme ultraviolet Imaging Telescope): コロナ下部の構造、活動を観測。
ERNE (Energetic and Relative Nuclei and Electron experiment): 太陽風のイオン、電子組成を測定。
GOLF (Global Oscillations at Low Frequencies): 太陽全体の振動を測定し、内部構造を調査。
LASCO (Large Angle and Spectrometric COronagraph experiment): コロナの構造と変化を観測。
MDI (Michelson Doppler Imager): 光球のガス速度や磁場を測定し、日震学による太陽内部構造の調査を行う。対流層やコロナに影響を与える磁場の情報を収集。SOHOが送信するデータの中で最も大きな割合を占める。
SUMER (Solar Ultraviolet Measurement of Emitted Radiation): コロナのプラズマ流、温度、密度を測定。
SWAN (Solar Wind ANisotropies): 水素の特性スペクトルを観測し、太陽風の流れや太陽圏の密度分布を調査。
UVCS (UltraViolet Coronagraph Spectrometer): コロナの密度、温度を測定。
VIRGO (Variability of solar IRradiance and Gravity Oscillations): 太陽全体の放射を測定し、内部の重力波振動を探索。

これらの機器によって得られた観測データは、画像として公開されており、インターネットを通じて閲覧することが可能です。画像は可視光線から紫外線まで広範囲な波長をカバーしており、波長に応じて疑似的な色が付けられています。

その他の成果

SOHOは、太陽をかすめるサングレーザーと呼ばれる彗星を2,000個以上発見し、これらの彗星は「SOHO彗星」と名付けられています。2010年には発見された彗星の数が2,000個に達し、2015年には3,000個を超えました。これらの彗星の多くは、クロイツ群に属しています。

運用状況

SOHOは2013年にミッションの延長が承認され、現在も運用が続けられています。SOHOは、太陽観測と宇宙天気予報において、引き続き重要な役割を担っています。

外部リンク

SOHOに関するESA公式サイト
* SOHO による現在の太陽のスナップショット

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