SOLAR-Cとは？意味をやさしく解説 - サードペディア百科事典

SOLAR-C (ソーラーシー) 計画

SOLAR-Cは、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 (ISAS/JAXA) と自然科学研究機構国立天文台 (NAOJ) を中心としたSOLAR-Cワーキンググループによって検討が進められている大型太陽観測衛星計画です。この計画は、日本の太陽観測衛星の系譜を継ぐもので、過去の「ひのとり (ASTRO-A)」、「ようこう (SOLAR-A)」、「ひので (SOLAR-B)」に続く次世代の観測機として位置づけられています。

計画の変遷

当初、SOLAR-Cは欧州宇宙機関 (ESA) との国際協力ミッションとして、2020年代の打ち上げを目指していました。しかし、ESAのミッションとして採択されなかったため、計画は一度頓挫しました。その後、ミッションの目的や規模が見直され、より機能に焦点を当てた小型衛星「Solar-C_EUVST」を2020年代半ばに打ち上げることを目標に再検討が進められています。一方、当初の構想であった大型衛星については、2030年代の打ち上げを目指して検討が継続されています。

SOLAR-C の初期検討

SOLAR-Cの検討は、2007年度に次期太陽観測衛星検討ワーキンググループが設立されたことから始まりました。このワーキンググループでは、2つのプランが検討されました。

プランA: μ20イオンエンジンを使用し、黄道面から離れて太陽の極域を観測する計画です。可視光とX線を用いて日震学的な観点から太陽の内部構造を解析することを目的としていました。このプランでは、惑星間空間での観測が想定されており、JAXA月・惑星探査プログラムグループ (JSPEC) が開発に協力する予定でした。
プランB: 地球周回太陽同期軌道から、ひのでを超える分解能を持つ望遠鏡を用いて太陽の詳細な観測を行う計画です。可視光と紫外線を使用し、光球、彩層、コロナの物理過程を解析することを目的としていました。

2011年3月、SOLAR-CワーキンググループはプランBをSOLAR-Cとして選定しました。国際的な評価も高かったプランAは、将来の「SOLAR-D」としての実現を目指して検討が継続されることとなりました。

ミッションの再検討

2015年初めには、JAXAの戦略的中型計画とESAのCosmic Vision Medium 4号機にミッション提案が同時に提出されました。JAXAの戦略的中型計画2号機の1次選定では1位で通過したものの、ESAでは不採択となり、JAXAのミッション定義審査も通過できなかったため、ミッション全体の見直しを余儀なくされました。

科学的目的

SOLAR-Cの科学的目的は、太陽の活動現象や構造を詳細に解明することです。特に、太陽の表面からコロナまでの領域における磁場やプラズマの挙動、エネルギー輸送のメカニズムを明らかにすることを目指しています。

搭載予定機器

2015年に戦略的中型計画に提出された段階では、以下の観測機器を搭載する予定でした。

光学磁場診断望遠鏡 (Solar UV-Visible-IR Telescope, SUVIT):
口径1.4メートル級の大型光学望遠鏡であり、太陽観測用の宇宙望遠鏡としては世界最大級です。
高解像度と高集光力により、高精度の磁場診断を実現し、光球・彩層の磁場を高精度に観測します。
紫外線高感度分光望遠鏡 (EUV/FUV High Throughput Spectroscopic Telescope, EUVST):
彩層・遷移層からコロナ・フレアプラズマまでの多様なプラズマが発する極端紫外域から遠紫外域の輝線を分光観測します。
温度、密度、速度といったプラズマ診断情報を２次元マップとして取得します。
コロナ撮像観測システム (High Resolution Coronal Imager, HCI):
旧称XIT。遷移層からコロナを対象として、高空間分解能（0.3"以下）での撮像を行います。

現在の状況

計画は変更を重ね、現在は小型衛星「Solar-C_EUVST」を優先的に実現することを目指しています。この小型衛星は、より焦点を絞った観測を行うことで、太陽の謎の解明に貢献することが期待されています。また、大型衛星計画も引き続き検討されており、2030年代の打ち上げを目指しています。

SOLAR-C

SOLAR-C (ソーラー シー) 計画