SONORITE

山下達郎『SONORITE』：7年ぶりのフルアルバム、その魅力と制作秘話

2005年9月14日にリリースされた山下達郎の12作目のスタジオアルバム『SONORITE』（ソノリテ）は、前作『COZY』から実に7年ぶりのオリジナルアルバムとして、多くのファンを待ちわびさせた作品です。この7年間、山下達郎は主に竹内まりやの作品制作に携わっており、自身のアルバムリリースは1999年のアカペラアルバム『ON THE STREET CORNER 3』と2002年のベストアルバム『RARITIES』のみでした。

『SONORITE』には、書き下ろしの新曲が3曲のみという構成がとられています。残りの楽曲は、これまでに制作されたCMタイアップソングや、過去の楽曲のセルフカバー、シングル曲のAB面などが収録されています。このアルバム構成については、リリース当時賛否両論がありましたが、山下達郎自身は、今後のアルバム制作をよりスムーズに進めるため、未発表楽曲の整理という意図もあったと語っています。

アルバム制作においては、レコーディングで使用していたソニーのデジタルマルチトラックレコーダーPCM-3348の生産終了を機に、Pro Toolsの導入を余儀なくされました。これにより、前作『COZY』とは全く異なるサウンド環境での制作となり、新しいサウンド作りに苦心したと山下達郎は振り返っています。

当初は9月21日発売と発表されていましたが、制作が順調に進んだため、1週間前倒しでのリリースとなりました。山下達郎自身にとっても、発売日が早まることは前例のないことであり、ラジオ番組『サンデー・ソングブック』でその驚きを語っています。

アルバムタイトルの『SONORITE』は、フランス語で「音の響き具合」を意味する言葉です。初回限定盤は紙ジャケット仕様で発売されました。収録曲は、ミディアムテンポからアップテンポまでバラエティに富み、山下達郎の幅広い音楽性を示すものとなっています。ケツメイシのRYOをフィーチャリングした楽曲も収録され、新鮮なコラボレーションも聴きどころです。

『SONORITE』は、長年のブランクを経てリリースされたアルバムというだけでなく、制作環境の変化や、楽曲選定における新たな試みなど、山下達郎の音楽家としての進化を示す重要な作品と言えるでしょう。また、アルバムリリースと同時に、全日空の航空便内番組では山下達郎と中村貴子の対談形式でムーン・レーベル時代の楽曲を流す『空のソノリテ』が放送され、さらに本作の楽曲への注目を集めました。

このアルバムは、単なる楽曲集ではなく、山下達郎の音楽に対する姿勢、そして時代の変化に対応しながらも独自の音楽性を追求する姿勢を示した作品として、彼のディスコグラフィの中でも重要な位置を占めていると言えるでしょう。 長年のファンはもちろん、初めて山下達郎の音楽に触れる人にとっても、その魅力を発見できる作品であることは間違いありません。 様々な要素が複雑に絡み合い、聴き応えのある、そして考えさせられる、そんなアルバムとなっています。

さらに、このアルバムのリリースは、山下達郎自身の音楽制作に対する新たな一歩を象徴するものでもあります。 デジタル環境への適応、楽曲選定における新しい試み、そしてリリーススケジュールに対する柔軟な対応など、様々な面で彼のアーティストとしての成長を感じ取ることができます。 『SONORITE』は、単なる音楽作品という枠を超え、山下達郎というアーティストの進化の過程を垣間見ることができる、貴重な一枚と言えるでしょう。

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