SOUL RED 松田優作

SOUL RED 松田優作

2009年に製作・公開されたドキュメンタリー映画『SOUL RED 松田優作』は、昭和から平成にかけて日本の映像界に圧倒的な存在感を放った俳優、松田優作の生誕60周年と没後20年という節目を記念して企画されました。この作品は、単なる追悼ではなく、彼の銀幕やブラウン管に焼き付けられた「俳優」としての凄みに徹底的に焦点を当てています。

映画は、これまで一般に公開されることのなかった貴重な肉声のインタビューや、秘蔵されてきたアーカイブ映像をふんだんに使用しつつ、新たに撮影された関係者たちの証言を織り交ぜて構成されています。最大の特徴は、松田優作の私生活や生い立ちといった個人的な側面には深く踏み込まず、ひたすら「俳優」としての仕事、役柄への向き合い方、そしてその表現が周囲に与えた影響にフォーカスしている点です。作中に挿入される過去の映画、テレビドラマ、CMといった出演作品のフッテージは、デジタル技術によって可能な限り最良の状態に修復され、彼の軌跡を鮮やかに描き出しています。

インタビューに登場する顔ぶれも、この映画の重要な要素です。かつて松田優作と共に数々の作品を創造した映画監督、脚本家、撮影技師、プロデューサーといったベテランの映画人たちが、当時の制作秘話や彼の仕事ぶりを克明に語ります。それだけでなく、彼を敬愛してやまない現代の第一線で活躍する若い俳優たちや、実の息子である俳優の松田龍平、松田翔太も出演し、父としての優作ではなく、「俳優・松田優作」という存在が自身に与えた影響について語ります。これらの多岐にわたる視点を取り入れることで、作品は単なる過去の偉人の回顧録に留まらず、現代にまで続くその普遍的な魅力や影響力を浮き彫りにしています。また、説明的なナレーションを一切排した演出スタイルも、観る者が彼の姿と証言にじかに向き合うことを促し、作品の臨場感を高めています。

本作は、まず第22回東京国際映画祭の特別招待作品として披露され、大きな注目を集めました。その後、松田優作の命日である11月6日に合わせて全国の劇場で正式に公開されました。公開後も反響は続き、2010年7月9日にリリースされたDVD版は、発売から間もないオリコン週間DVDランキングの邦画部門で首位を獲得。これは、過去にリリースされた松田優作関連作品の中でも最高のセールス記録となり、改めて彼の根強い人気とこのドキュメンタリーへの関心の高さを証明しました。

映画の公開に合わせて、連動したメモリアルプロジェクトも実施されました。特に印象的だったのは、松田優作を敬愛するアーティストたちが集結したトリビュートライブです。彼の生誕日である9月21日を皮切りに、命日の11月6日には、映画『ブラック・レイン』のロケ地としても知られる大阪の旧名村造船所跡地を含む、東京、名古屋、横浜の4都市で開催されました。石橋凌、ジョー山中、谷中敦、中村達也といった豪華なアーティストたちが参加し、音楽を通して松田優作の世界を表現しました。さらに、様々なファッションブランドとのコラボレーションによる記念グッズも制作され、多角的なアプローチで「俳優・松田優作」に光を当てたプロジェクトとなりました。

映画には、以下のような多才なゲストがインタビュー出演しています。

アンディ・ガルシア（俳優）
香川照之（俳優）
浅野忠信（俳優）
仲村トオル（俳優）
黒澤満（映画プロデューサー）
仙元誠三（撮影技師）
関根忠郎（惹句師）
丸山昇一（脚本家）
森田芳光（映画監督）
宮藤官九郎（俳優・脚本家・映画監督）
筒井ともみ（脚本家）
今村力（美術デザイナー）
吉永小百合（女優、声のみ）
松田龍平（俳優）
松田翔太（俳優）

また、本作を製作した主なスタッフは以下の通りです。

監督：御法川修
撮影：渡部眞
録音：高野泰雄
映像：高木正勝
編集：時森茂和
* 音楽スーパーバイザー：富田和樹

『SOUL RED 松田優作』は、一人の偉大な俳優が遺した足跡を、単に懐かしむのではなく、その表現の真髄に迫り、現代にどのように響いているのかを問いかける意欲的なドキュメンタリー作品と言えるでしょう。

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