SPACY

山下達郎『SPACY』：音楽的探求の結晶

1977年6月25日にリリースされた山下達郎のセカンドアルバム『SPACY』は、彼の音楽家としての才能と探究心が爆発した、極めて重要な作品です。前作『CIRCUS TOWN』のニューヨーク録音を経て、山下達郎は独自の音楽的視点を確立し、それを『SPACY』で余すことなく表現しています。

独自の音楽性と豪華ミュージシャン陣

『CIRCUS TOWN』のニューヨーク録音で得た経験は、山下の音楽観に大きな影響を与えました。特に、チャーリー・カレロから持ち帰ったスコアは、既存の理論書とは異なる実践的なアイデアに満ち溢れており、山下の音楽制作に新たな可能性を開きました。この経験を基に制作された『SPACY』は、彼自身の音楽的探求の集大成ともいえる作品となっています。

レコーディングには、当時日本のトップクラスのミュージシャンが参加。リズム隊は、[村上秀一]、細野晴臣(ベース)、ギター'>[松木恒秀]、佐藤博(キーボード)という豪華な布陣に加え、[上原裕]、田中章弘(ベース)、[坂本龍一]といった、山下と親交の深いミュージシャンも参加しています。異なるメンバーによる演奏を比較することで、楽曲に深みと幅を持たせています。それぞれのミュージシャンの個性がぶつかり合いながらも、見事に融合したサウンドは、まさにこのアルバムの大きな魅力の一つです。

アルバムの構成と楽曲の魅力

『SPACY』は、A面とB面で異なる性格の楽曲が配置されています。A面は、洗練されたアレンジと、山下達郎のソングライティングセンスが光る楽曲が並んでいます。「LOVE SPACE」のキャッチーなメロディーと繰り返される16小節のテーマは、ライブでの演奏にも適した構成で、後のライブでも頻繁に演奏されています。また、「素敵な午後は」はシカゴ・ソウルの影響を感じさせる、ソウルフルな一曲。緻密なスコアに基づいたセッションは、ミュージシャンたちの個性を際立たせる結果となりました。「CANDY」は変わったコード進行が特徴的で、「DANCER」では村上の16ビートドラムを活かした楽曲となっています。

B面は、より内省的な楽曲が中心です。ピアノ弾き語りをベースにしたアレンジが用いられており、山下の繊細な表現力が際立っています。「アンブレラ」は吉田美奈子との共作で生まれた内省的な作品です。「朝の様な夕暮れ」は一人アカペラに挑戦した初期の作品であり、そのシンプルな構成の中に奥深い表現があります。「きぬずれ」は、ビーチ・ボーイズの影響を感じさせる、明るく軽快な曲調が特徴的です。「SOLID SLIDER」は、当時流行していたAORを意識した楽曲で、大村憲司によるギターソロも見所となっています。

アルバムの評価とその後

『SPACY』は、発売当時から高い評価を受け、現在でも多くのファンから愛される名盤となっています。山下達郎自身も気に入っており、しばしば自身のベストアルバムとして挙げるほどです。2002年にはデジタルリマスタリングされ、ボーナス・トラックを追加収録したCDがリリースされました。さらに、2023年にはRCA/AIR YEARSシリーズの一環としてアナログ盤とカセットテープが発売され、再び注目を集めています。オリジナルマスターテープからのリマスタリング、高音質でのアナログ盤化によって、当時とは異なる新鮮なサウンドを楽しむことができます。オリコン週間アルバムランキングでもTOP10入りを果たし、その人気の高さが証明されています。

『SPACY』は、山下達郎の音楽的探求心と、高い音楽性を示す重要な作品であり、日本の音楽史に燦然と輝く傑作としてこれからも聴き継がれていくことでしょう。

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