SPQR

SPQRとは、ラテン語の「Senātus Populusque Rōmānus（セナートゥス・ポプルスクェ・ローマーヌス）」の頭文字をとった略語であり、「ローマの元老院と人民」という意味を持ちます。これは、古代ローマ国家（共和政ローマおよびローマ帝国）における主権者を指し示す言葉として用いられました。つまり、国家の意思決定権は元老院と市民によって構成される共同体に帰属するという考え方を表現しています。

この言葉は単に国家の主権を示すだけでなく、演説などの公式な場での挨拶としても使用されました。現代で言うところの「紳士淑女諸君」に相当する、格式高い表現として使われていたのです。

概要

SPQRの文字は、古代ローマとその市民の栄光と誇りを象徴するものでした。その証拠に、SPQRの文字は当時ローマ帝国の支配下にあった地域、現在のヨーロッパや北アフリカに至るまで、公共物、例えば記念碑や建造物、水道橋などに刻まれました。また、ローマ軍団の軍旗にもこの文字が見られ、軍事的な意味合いにおいても重要な役割を果たしていたことがわかります。ローマ時代の遺跡や、それらを基に建てられた建造物、そしてローマ市の盾形の紋章にも、このSPQRの文字は刻まれており、その歴史的な重要性を今に伝えています。

現在の使用例

現代においても、SPQRはローマ市において重要な役割を果たしています。例えば、ローマ市の広報活動では、「SPQR『ゴミはクズカゴヘ』」といった風に、標語の一部として使用されることがあります。また、マンホールの蓋やタクシーのドアなど、日常生活で目にする場所にもSPQRの文字が描かれており、ローマの歴史と文化を感じさせるデザインとして親しまれています。さらに、イタリアのプロサッカークラブであるASローマは、ユニフォームにスポンサーロゴの代わりにSPQRを使用することがあり、クラブのアイデンティティの一部として、この歴史的な略語を採用しています。

しかしながら、SPQRは常に敬意を払われた表現として使われているわけではありません。例えば、「Sono pazzi questi Romani.（このローマ市民どもは可笑しい）」という言葉は、SPQRの厳格なイメージとは対照的に、ローマ人を揶揄するニュアンスを込めて使われることがあります。これは、SPQRが持つ歴史的な重みと、現代における市民生活のギャップを皮肉った表現と言えるでしょう。

関連項目

• - ローマ法：SPQRが象徴するローマ国家の法体系。市民権や法の支配といった概念を理解する上で重要。
• - バチカン：ローマ市内にある独立国家であり、ローマの歴史と密接な関係を持つ。
• - Civis romanus sum：「私はローマ市民である」という言葉で、ローマ市民権の重要性と特権を示している。SPQRが象徴するローマの権威を体現する言葉の一つ。

もう一度検索