SR-1ベクトル

SR-1(SPS)

SR-1（Специальная Разработка-1, ロシア語で「特別開発-1」の意味）は、ロシア連邦のTsNIITochMash（精密工学中央 научно исследовательский институт точного машиностроения）によって1996年に開発された、9x21mmギュルザ弾を使用する半自動拳銃です。現在では、SR-1Mとして生産されています。

開発の経緯

この拳銃は、法執行機関および特殊部隊で使用されていたAPS（水中拳銃）を代替するために、1980年代に開発が始まりました。開発にあたっての要求事項（TTZ）には、以下のような要素が含まれていました。

最大100mの射程
ボディアーマーに対する貫通能力
車両や非装甲の障害物を貫通し、無力化する能力

このような拳銃の需要が高まった背景には、世界の軍隊や犯罪組織にボディアーマーが普及し、既存の拳銃では貫通が困難になったことが挙げられます。

1991年、ロシアの拳銃採用トライアル「グラッチ」の一環として、TsNIITochMashは新型の9mm口径弾薬（後の9x21mm «ギュルザ»弾）を開発し、それを使用する拳銃も合わせて開発することになりました。ピョートル・イヴァノヴィチ・セルジュコフが率いるTsNIITochMashの設計チームは、「グラッチ」の技術要件に従い、新規開発した9mm口径弾のRG052を使用するPSという試作型を2種類開発しました。

1993年には、FSB（ロシア連邦保安庁）の指定した技術要件に基づき、PSの改良型であるヴェクターが開発されました。1995年には、PSおよびヴェクターの特許が認証され、新たに指定された技術要件に基づいたRG055というモデルが開発されました。RG055は、法執行機関の特殊部隊で一部運用されました。これらの発展を受けて、ロシア連邦保安庁の専門家からRG055および使用弾薬のRG054の利点が評価され、「グラッチ」から独立し、「ヴェクター」としてRG055の改良、そしてRG054を使用する短機関銃（後のSR-2 «ヴェレスク»）を開発するよう命令が出されました。

また、1996年に開催された軍事展示会VTTV-1996では、海外輸出向けモデルであるRG055Sが公開されるなど、輸出も積極的に進められました。

1996年、RG055はSR-1に改良され、使用弾薬のRG054も9x21mm PS／SP-10弾に改良されました。その後、SR-1はTsNIITochMashで量産が開始されました。SR-1はさらに改良され、改良型は2003年にロシア陸軍にSPS（9-мм Самозарядный Пистолет Сердюкова, ロシア語で「セルジュコフ自動装填拳銃」の意味）として採用されました。

構造

作動方式はショートリコイルで、リターンスプリングはPMやAPSと同様に銃身上に配置されていますが、先端にリターンスプリングの停止器具が取り付けられている点が異なります。銃身はクロムメッキ処理が施されています。SR-1には従来のマニュアルセーフティはありませんが、トリガー機構を解除するグリップセーフティと、トリガーが押されていない時の発射を防止するトリガーセーフティが装備されています。さらに、ハンマーがハーフコックの位置にないとシアが作動せず、ダブルアクション射撃が可能です。

フレームにはプラスチックが多用されていますが、スライドやグリップ、トリガーガード以外の部分には従来通り金属が使用されています。トリガーガードの前面は窪んでおり、セレーション（滑り止め）があるため、指置きとして使用できます。アイアンサイトには非反射性仕上げが施されており、白い点があるため、暗い状況でも照準が容易です。

派生型

RG055: 最初の試作型にあたるモデルで、1996年に2000挺ほどが先行生産されました。濃い灰色の樹脂でグリップからトリガーガードが構成されており、形状も若干異なります。
RG055S «ギュルザ»: RG055の海外輸出仕様です。外見の仕上げに差異があり、«ギュルザ»の愛称の通り、スライド右側の排莢口の下あたりに蛇のマークが彫られています。
SR-1: 1996年12月〜2000年までにFSBやFSOなどの特殊機関、部隊向けに生産されました。グリップにはTsNIITochMashの企業ロゴであるフクロウのマークが彫られています。マイヤクで生産されたモデルでは、フクロウではなく円に囲まれた数学記号「ラジカル」が彫られています。
RG060 «ギュルザ»: SR-1の海外輸出仕様です。
SPS／セルジュコフSPS: 2000年からロシア国防省とSVRの特殊部隊向けに生産されているモデルです。マガジンリリースボタンの形状が変更されたほか、全体の形状も若干変更されています。現在は生産されていません。
SR-1M: 2003年からFSBとFSO向けに生産されているモデルです。ほぼ全ての9x21mm弾に対応し、アイアンサイトが変更されました。また、スライドストップ作動時にマガジンを挿入すると、自動的にスライドがリリースされるよう変更されました。
SR-1MP: 現在の最新モデルです。スライドの前部にもセレーションを追加し、フレームにピカティニーレールを取り付けられる溝を追加しました。ピカティニーレールを取り付けることで、様々な光学照準器やフラッシュライト、レーザーサイトを取り付けることができます。

使用部隊

キルギス – キルギス共和国軍
ロシア
2003年時点のロシア連邦警護庁
2003年時点の連邦保安庁
ロシア連邦軍参謀本部情報総局

参考文献

А。 И。 Благовестов。 То, из чего стреляют в СНГ: Справочник стрелкового оружия. / под общ.ред. А。え。 Тараса。 Минск, «Харвест», 2000. стр.69-71
А。 A. Жук。 Энциклопедия стрелкового оружия: револьверы, пистолеты, винтовки, пистолеты-пулемёты, автоматы. — М.: 2002 年に発行。

外部リンク

Serdyukov SPS / Internet Movie Firearms データベース

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