SS-520ロケット

SS-520：日本の小型観測ロケットとその挑戦

SS-520は、宇宙航空研究開発機構（JAXA）傘下の宇宙科学研究所（ISAS）によって開発された観測ロケットです。JAXAが運用する観測ロケットの中で最大規模を誇り、高度1000kmへの観測機器打ち上げを目的としています。単なる観測ロケットの枠を超え、人工衛星打ち上げへの挑戦と、その過程で得られた貴重な経験と技術革新が注目されています。

ロケットの構成と技術

SS-520は、S-520ロケットを1段目として、新規開発の2段目ロケットSS-520B2を組み合わせた2段式ロケットです。2段目は炭素繊維強化プラスチック（CFRP）製で、軽量化と高圧燃焼による性能向上を実現しています。1段目はS-520と同様に空気力学的に安定した設計で、尾翼によるスピンを発生させます。2段目はこのスピンを安定飛行に利用し、姿勢変更が必要な場合は、ラムライン姿勢制御装置を追加搭載することで対応します。

超小型衛星打上げ機への転用

SS-520の高い能力に着目し、超小型衛星打上げ機への転用も検討されました。その結果、2017年には3段目を追加した4号機が初飛行、2018年には5号機が人工衛星の軌道投入に成功しました。4号機と5号機は技術実証機であり、継続的な運用は計画されていませんでしたが、この成功は大きな一歩となりました。

3段式ロケット：挑戦と失敗からの学び

当初から、3段目ロケットを追加することで、約15kgの人工衛星を軌道投入できる可能性が模索されていました。2016年には、4号機を用いた超小型衛星打ち上げ実験が計画されました。この計画では、3段目を追加し、LEO(低軌道)に4kg以上の衛星を投入できる能力を目指しました。しかし、2017年1月の初飛行は、発射20秒後に通信途絶という結果に終わりました。原因究明の結果、電源ケーブルの断線という、予期せぬトラブルが判明しました。軽量化のための材料変更と、薄いケーブル皮膜の使用が重なり、熱によるショートが発生したと結論づけられました。

この失敗を教訓に、改良を加えた5号機が2018年2月に打ち上げられました。4号機での問題点を改善した結果、人工衛星「TRICOM-1R（愛称：たすき）」の軌道投入に成功。これは、L-4Sロケット以来48年ぶりの快挙であり、「史上最小の人工衛星打ち上げロケット」としてギネス世界記録に認定されました。

将来展望：空中発射型ロケットAL-520

SS-520の技術を応用した空中発射型ロケットAL-520の計画も存在しました。C-130輸送機から発射することで、17kgの人工衛星を打ち上げることを目指していました。これは、費用対効果の高い衛星打ち上げシステムとして期待されていましたが、現時点での具体的な進展状況は不明です。

まとめ

SS-520は、その高い能力と小型衛星打ち上げへの挑戦を通して、日本の宇宙開発技術の進歩を象徴する存在です。4号機での失敗は、技術開発におけるリスク管理の重要性を改めて示す事例となりましたが、5号機の成功は、その後の更なる技術革新への道を切り開きました。SS-520が培ってきた技術は、将来の日本の宇宙開発においても重要な役割を果たしていくでしょう。今後の発展が期待されます。

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