STAY (映画)

STAY

2007年に製作された日本映画『STAY』は、漫画家・西炯子による同名コミックを映画化した青春群像劇です。古田亘が監督を務め、高校の演劇部に所属する少女たちがそれぞれの夏休みを通して成長していく姿を、繊細かつ鮮やかに描き出した作品として知られています。

原作について

本作の基となったのは、西炯子の漫画『STAY～ああ今年の夏も何もなかったわ〜』で、この物語は「STAY」シリーズの第1巻にあたるエピソード群です。月刊誌『flowers』に2002年8月号から2003年1月号にかけて連載され、読者からの支持を得ました。単行本としては、2003年3月20日にB6判（フラワーズコミックス刊）が、その後2010年9月20日には文庫版（小学館文庫）が出版されています。映画で描かれるのは主にこの第1巻の内容ですが、原作シリーズには本作に登場するキャラクターたちのその後の物語も存在する点が異なります。また、映画版のストーリーは、物語の細部にわたって原作漫画とは異なる展開を見せていることも特筆されます。

物語の概要

物語は、高校の演劇部に所属する五人の女子高生たちがそれぞれの夏休みを過ごす様子を、独立したオムニバス形式で描いています。それぞれの少女が直面する悩みや、夏ならではの出会いを通して、わずかながらも自己や他者との関係性を見つめ直し、成長していく姿が丁寧に描かれます。

各エピソード

- 玉井由美：演劇部で男役を担うことが多い由美は、夏期講習に参加します。他の女子たちからちやほやされる一方で、内心では女性らしい自分に憧れを抱いており、密かに女役の台詞を練習していました。その姿を友人に見つけられますが、その友人からの後押しを受け、講習の最後にはそれまでとは違う、女性的な装いを選ぶ勇気を得ます。
- 宮園真保：大ファンである舞台俳優・市丸洋史の公演を観るため、いとこの家に滞在する形で東京へ向かいます。歩きながらパンフレットを読んでいた際に、車に接触したかのように意識的に倒れてしまい、偶然にもその車を運転していた市丸本人と出会います。短いやり取りの中で、憧れの人物の意外な一面に触れて幻滅し涙しますが、彼が後に残したメッセージを読んで心を落ち着かせます。
- 山王みちる：携帯電話を持たない、現代では珍しい感性を持つみちるは、佐藤敦士と出会います。彼女のマイペースさに佐藤は振り回されつつも、電車での追いかけっこや観覧車での会話などを共にします。佐藤は当初本気ではありませんでしたが、「銀河鉄道の夜」に関する会話を通して、互いの内面にある寂しさに触れることになります。佐藤と別れた後、みちるは彼との時間が「デート」であったことに気づきます。
- 佐々貫リカ：リカは幼馴染である津守邦彦、三隅竜太と共に、子供の頃にした奇妙な約束を思い出します。「川でカッパを見つけた者同士が将来結婚する」というその約束を巡り、成長した三人は冗談半分でカッパ探しに出かけ、子供の頃の思い出と現在の関係性が交錯する時間を過ごします。
- 樋高洋子：農家の娘である洋子は、畑仕事の途中で軽トラックが脱輪したところを教師の松木馨に助けられます。その後、東京から突然訪れた父親との再会、そして母親が父親を受け入れようとする状況に直面し、複雑な感情を抱きます。この家族の問題について、洋子は松木に自身の率直な思いを打ち明けることで、二人の関係が深まります。

STAY（最終章）

物語のクライマックスでは、東京への引っ越しが現実味を帯びてきた洋子を他の部員たちが気遣う様子が描かれます。洋子と松木の関係も進展し、松木は洋子に真摯なプロポーズを試みます。一度は信頼できないと断られるものの、松木の改めての強い言葉に、洋子は彼を受け入れる決意をします。そして、旅立つかもしれない友人への惜別の念を、演劇に使う紙吹雪を皆で浴びせるという行為で表現し、それぞれの特別な夏が終わりを迎えます。

スタッフ

監督：古田亘
原作：西炯子
脚本：佐藤友紀
撮影：宇井忠幸
音楽：出田慎吾
製作：ギャガコミュニケーションズ
主題歌：バンバンバザール

キャスト

樋高洋子（よーぴん）：仲村瑠璃亜
山王みちる（山ちゃん）：柳生みゆ
佐々貫リカ（リカ）：浜田麻希
玉井由美（玉ちゃん）：長谷部瞳
宮薗真保（宮ちゃん）：通山愛里
佐藤敦士：タモト清嵐
三隅竜太：小林且弥
津村邦彦：倉貫匡弘
松木馨：橋本じゅん
* その他：綱島郷太郎、倉貫匡弘、小野明日香、瑠世、松谷嵐ほか