STS-75

STS-75：テザー衛星実験と数々の話題を呼んだミッション

STS-75は、1996年2月22日から3月9日にかけて行われた、スペースシャトルコロンビア号による19回目のミッションです。主な目的は、テザー衛星システム (TSS-1R) の再飛行実験と、アメリカ微小重力ペイロード (USMP-3) を用いた材料科学実験でした。

ミッションの概要

乗組員:
船長: アンドリュー・アレン
操縦手: スコット・ホロウィッツ
ミッションスペシャリスト: ジェフリー・ホフマン、マウリツオ・ケーリ、クロード・ニコリエ、フランクリン・チャン＝ディアス
ペイロードスペシャリスト: ウンベルト・グイドーニ

主な目的:
テザー衛星システム (TSS-1R) の軌道投入とテザー推進実験
アメリカ微小重力ペイロード (USMP-3) による材料工学および物性物理学実験

テザー衛星システム (TSS-1R) の試験

TSS-1Rは、1992年のSTS-46ミッションで実施されたTSS-1の再飛行でした。この実験の目的は、テザー衛星システムの性能を評価し、以下のような特性を把握することでした。

TSSオービタの電流電圧応答
衛星の高圧鞘構造と電流収集過程
電力生産の実証
テザー制御の法則と基本的なテザーの原動力
プラズマシース内の中性ガスの影響
TSSの電波周波数とプラズマ波放出

高度296kmの軌道上で、テザー推進装置を電離圏に投入する計画でしたが、20.7kmのテザー展開中に、19kmを超えた時点でテザーが破断するという事態が発生しました。破断の原因は、テザーのナイロン製コア材の製造時に混入した気泡が、真空環境下で膨張し、絶縁体の微小な孔を露出し、高電圧によってプラズマ放電が発生したためと判明しました。このプラズマがシャトルに電流を流し込み、ケーブルを溶かしたと考えられています。

USMP-3による実験

USMP-3では、2つのMPESS (Mission Peculiar Experiment Support Structures) に搭載された4つの主要な実験と、シャトルのミッドデッキでの実験が行われました。

USMP-3で実施された実験:

Advanced Automated Directional Solidification Furnace (AADSF)
Material pour l'Etude des Phenomenes Interessant la Solidification sur Terre et en Orbite (MEPHISTO)
Space Acceleration Measurement System (SAMS)
Orbital Acceleration Research Experiment (OARE)
Critical Fluid Light Scattering Experiment (ZENO)
Isothermal Dendritic Growth Experiment (IDGE)

これらの実験を通じて、微小重力環境下での材料の凝固プロセスや流体の挙動に関する研究が進められました。

その他の出来事

Linuxカーネルの導入: STS-75では、Linuxカーネルベースの運用システムが初めて軌道上で使用されました。
UFO騒動: STS-75の映像に写っていた物体がUFOではないかと騒がれましたが、乗組員はスペースデブリの粒子であると説明しています。
* 偽文書騒動: STS-75で微小重力下での性交体位実験が行われたとする偽文書が出回り、NASAが否定する事態となりました。

まとめ

STS-75は、テザー衛星システムの実験における予期せぬトラブルや、ミッションとは直接関係のないUFO騒動や偽文書騒動など、様々な話題を呼んだミッションとして記憶されています。しかし、微小重力環境下での科学実験の推進や、宇宙技術の発展に貢献した重要なミッションであったことは間違いありません。

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