STS-83

STS-83：短縮されたミッションと異例の再飛行

STS-83は、スペースシャトルコロンビアによって1997年4月に行われたミッションです。当初は15日間の予定でしたが、燃料電池のトラブルにより、打ち上げからわずか4日足らずで中断されました。しかし、このミッションは、数ヶ月後に同じ乗組員によって再飛行されるという異例の事態となりました。

ミッションの概要

STS-83の主要な目的は、微小重力科学実験室（MSL）を使用した微小重力環境下での科学実験でした。MSLは、複数の国際協力プロジェクトの成果を結集したもので、材料科学、燃焼科学、流体物理学など、さまざまな分野の研究を目的とした19の実験施設を備えていました。

主要な実験施設

大型等温炉（LIF）： 宇宙開発事業団が開発した炉で、拡散係数の測定や液体金属の拡散実験などに使用されました。
Combustion Module-1 (CM-1)： NASAグレン研究センターが開発した燃焼実験モジュールで、層流すすプロセスや火炎球の構造に関する実験が行われました。
液滴燃焼実験（DCE）： 液滴の燃焼特性を調べる実験装置で、液滴の大きさや周囲の酸素濃度などを変化させて実験が行われました。
EXPRESSラック： スペースハブのダブルラックを置き換えるもので、Physics of Hard Spheres (PHaSE)実験とAstro/PGBA実験が行われる。
電磁式無容器処理装置（TEMPUS）： さまざまな流動様式での核生成実験や過冷却液体中の先端材料の熱物理的性質の実験などに用いられました。

これらの実験施設に加え、微小重力環境を測定するための装置や、Middeck Glovebox (MGBX)を用いた実験も行われました。

燃料電池のトラブルとミッションの中断

STS-83は、打ち上げから間もなく、3つある燃料電池のうちの1つに問題が発生しました。燃料電池内で酸素と水素の制御不能な混合が始まり、爆発の危険性が高まったため、NASAはミッションを早期に終了させることを決定しました。

STS-94：異例の再飛行

ミッションが中断された後、NASAはSTS-83と同じ乗組員、同じペイロードで、STS-94として再飛行を行うことを決定しました。これは、スペースシャトル計画において異例の事態でした。STS-94は、1997年7月に打ち上げられ、予定されていたすべての実験を成功させました。

クルー

船長：ジェームズ・ハルセル
操縦士：スーザン・スティル
ミッションスペシャリスト1：ジャニス・E・ヴォス
ミッションスペシャリスト2：マイケル・ガーンハート
ミッションスペシャリスト3：ドナルド・トーマス
ペイロードスペシャリスト1：ロジャー・クラウチ
ペイロードスペシャリスト2：グレゴリー・リンテリス

STS-83は、燃料電池のトラブルによって短縮されましたが、その後のSTS-94による再飛行によって、当初の目的を達成することができました。このミッションは、スペースシャトル計画における危機管理と国際協力の象徴として記憶されています。

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