STS-93

スペースシャトルミッションSTS-93の詳細解説

1999年7月23日、スペースシャトルコロンビア号は、STS-93ミッションのために打ち上げられました。これはスペースシャトル計画において95回目、コロンビア号としては26回目の飛行であり、また21回目の夜間打ち上げとなりました。このミッションで特筆すべきは、アイリーン・コリンズが女性として初めてスペースシャトルの船長を務めたことです。

ミッションの概要

STS-93の主な目的は、チャンドラX線天文台を宇宙空間へ展開することでした。チャンドラは、当時最も高度なX線天文台であり、宇宙の高エネルギー領域から放出されるX線を観測するために設計されました。この天文台は、爆発した恒星の残骸など、高温のガスから発せられるX線を捉えることを目的としていました。

乗組員

ミッションを遂行した乗組員は以下の通りです。

船長: アイリーン・コリンズ（3回目の宇宙飛行）
操縦士: ジェフリー・アシュビー（初飛行）
ミッションスペシャリスト1: ミシェル・トニーニ（2回目）
ミッションスペシャリスト2: スティーヴン・ホーリー（5回目）
ミッションスペシャリスト3: キャスリン・コールマン（2回目）

打ち上げ時のトラブル

打ち上げ時、スペースシャトルのメインエンジンに深刻な問題が発生しました。第3（右）エンジンの酸化剤注入口を塞いでいた金のピンが外れ、エンジンノズル内面に衝突し、冷却チューブを破損させました。これにより、水素の漏れが発生しました。さらに、電気系統のショートにより、中央エンジンの制御ユニットと右エンジンのバックアップユニットが無効になりました。幸いにも、各エンジンには予備の制御ユニットが備わっており、危機的な状況を回避することができました。しかし、このトラブルにより、外部燃料タンクの液体酸素が不足し、エンジンは予定より早く停止しました。最終的に機体は安全に軌道に到達し、ミッションは無事完了しました。

ミッションの目的と搭載ペイロード

STS-93ミッションの主なペイロードは、チャンドラX線天文台でしたが、他にも多くの実験装置が搭載されていました。

チャンドラ: 宇宙の高エネルギー領域からのX線を観測するX線天文台。
Midcourse Space Experiment (MSX): 中間軌道での実験。
Shuttle Ionospheric Modification with Pulsed Local Exhaust (SIMPLEX): 電離層の変動を調査する実験。
Southwest Ultraviolet Imaging System (SWUIS): 天体の紫外線を観測するシステム。
Gelation of Sols: Applied Microgravity Research (GOSAMR): 微小重力がゾルのゲル化に与える影響を調査。
Space Tissue Loss - B (STL-B): 微小重力下での細胞反応を研究する実験。
Light mass Flexible Solar Array Hinge (LFSAH): 形状記憶合金製の蝶番の実験。
Cell Culture Module (CCM): 微小重力が細胞に与える影響を研究。
Shuttle Amateur Radio Experiment - II (SAREX-II): アマチュア無線通信の実験。
EarthKAM: 地球観測を行う実験。
Plant Growth Investigations in Microgravity (PGIM): 微小重力下での植物の成長を調査。
Commercial Generic Bioprocessing Apparatus (CGBA): 微小重力下での生物学的実験。
Micro-Electrical Mechanical System (MEMS): 環境センサーの実験。
Biological Research in Canisters (BRIC): 小型節足動物や植物に対する宇宙飛行の影響を調査。

これらの実験は、微小重力環境下での様々な現象を理解するための重要なデータを提供しました。

スペシャルペイロード：宇宙飛行した金貨

このミッションでは、特別な貨幣も宇宙に運ばれました。アメリカ造幣局が製造した12枚の1ドル金貨がコロンビアに搭載されました。これらの金貨は、希少なものであり、後に公開されました。

その他の出来事

打ち上げの3日前には、カウントダウン中に検出器の誤表示により、打ち上げが中止されるというアクシデントがありました。また、ミッション中には、宇宙飛行士の起床のために特別な音楽が使用されました。これは、NASAの伝統的な取り組みの一環です。

コロンビア号は、ケネディ宇宙センターに夜間着陸しました。これは12回目のスペースシャトルの夜間着陸であり、うち5回がエドワーズ空軍基地、残りがケネディ宇宙センターでした。

ミッションの総括

STS-93ミッションは、多くの困難を乗り越え、成功裏に完了しました。チャンドラX線天文台の展開は宇宙観測における新たな扉を開き、その他の実験は微小重力環境下での科学研究を大きく進展させました。また、アイリーン・コリンズ船長をはじめとする乗組員の活躍は、多くの人々に感動を与えました。

出典

NASA PAO page about STS-93 - ウェイバックマシン（2001年2月2日アーカイブ分）
STS-93 Mission Operations Director's story on ascent
STS-93 JSC Ascent Audio
STS-93 Archives
STS-93 Video Highlights - ウェイバックマシン（2007年10月13日アーカイブ分）
* US Mint to show unseen gold space coins, collectSPACE

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