SU-76 (自走砲)

SU-76：ソ連が生んだ самоходная установка (自走砲)

SU-76は、第二次世界大戦中にソビエト連邦が開発した自走砲であり、その名称はロシア語の「самоходная （артиллерийская） установка（サマホードナヤ・アルチレリイスカヤ・ウスタノーフカ）」、つまり「自走砲」の頭文字に由来します。T-70軽戦車をベースに設計され、戦況の必要性から大量生産されました。

開発の背景

独ソ戦開始前のソ連赤軍は、機械化を進める一方で、トハチェフスキー元帥らの粛清により自走砲の開発が遅れていました。初期にはT-26軽戦車をベースにしたSU-5やGAZ-AAトラックをベースにしたSU-6などが実戦投入されましたが、十分な戦力とは言えませんでした。対戦車自走砲も不足しており、1941年9月にはコムソモーレッツ砲兵トラクターに57mm対[[戦車砲]]を搭載したZiS-30が急遽開発、投入されるなど、場当たり的な対応を迫られました。しかし、既存のT-26を改造する計画も初期の敗北によって頓挫しました。包囲下のレニングラードでは、T-26の砲塔を撤去し、76.2mm連隊砲を搭載したSU-76が暫定的に生産されました（後にSU-76Pと改称）。

ドイツ軍との戦いを通じて自走砲の必要性を痛感したソ連軍は、軽・中・重の3クラスで新型自走砲の開発を決定。軽自走砲の開発には、大量に生産されていた軽戦車の車台やコンポーネントを流用することとし、各工場に開発を指示しました。その結果、SU-12とSU-15が採用されますが、SU-12は駆動装置の問題から生産が打ち切られ、SU-15がSU-76として本格的に生産・配備されることとなりました。

SU-76Mとその戦歴

最も代表的な型であるSU-76Mは、1943年から終戦後にかけて16,698輌も大量生産されました。ソ連国内では戦後すぐに一線装備から外されましたが、東側諸国へ供与され、長く使用されました。

SU-76以前の試作自走砲

SU-76開発以前にも、いくつかの試作自走砲が存在しました。

OSA-76（OSU-76）: GAZが提案した軽自走砲。T-60軽戦車の車台を流用しましたが、安定性の問題から試作に終わりました。
ZiS-3Sh搭載第37工場製自走砲: T-60軽戦車のコンポーネントを流用した、SU-76の始祖ともいえる車両。しかし、スターリングラード戦線の悪化により開発が中断されました。
U-31: UZTMで開発された、T-40軽戦車ベースの自走砲。開発データは第38工場に譲渡されました。
SU-71: GAZが試作した自走砲。外観は量産型のSU-76に似ていましたが、SU-12が採用されたため量産されませんでした。

SU-76のバリエーション

SU-76には、いくつかのバリエーションが存在します。

SU-12（SU-76）: 第38工場が開発した最初の量産型SU-76。密閉式の戦闘室でしたが、換気の問題から後に上部装甲が撤去されました。駆動装置の故障が多発し、問題となりました。
SU-16（SU-18）: 第38工場が試作した小型軽量型。SU-15が採用されたため、量産されませんでした。
SU-15/SU-15M（SU-76M）: 最も大量に生産された代表的な型。駆動方式が改善され、換気装置も改良されました。SU-15Mはオープントップとなり、大戦後半の主力自走砲として活躍しました。しかし、防御力の低下や乗り心地の悪さから、兵士からは不評を買うこともありました。後期型では防御力が若干向上し、朝鮮戦争でも使用されましたが、多くが失われました。

その他の派生型

SU-76改造牛乳運搬車: 主砲と装甲を取り払い、荷台を取り付けたものも存在しました。

SU-76は、その欠点にもかかわらず、第二次世界大戦におけるソ連軍の勝利に大きく貢献した自走砲でした。

登場作品

Red Orchestra: Ostfront 41-45
War Thunder
World of Tanks
トータル・タンク・シミュレーター

関連項目

戦車
戦車一覧
自走砲
自走砲一覧
T-70
SU-76i

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