Skylakeマイクロアーキテクチャ

Skylakeマイクロアーキテクチャ

Skylakeマイクロアーキテクチャは、インテルによって開発されたマイクロプロセッサのアーキテクチャです。2015年8月5日に正式発表され、第6世代Intel Coreプロセッサおよび第1世代Intel Xeon Scalableプロセッサとして製品化されました。

概要

Skylakeマイクロアーキテクチャは、BaniasやConroe、Sandy Bridgeなどと同様に、イスラエルのハイファで開発されました。開発期間は4年にも及び、当初は性能向上を目標としていましたが、途中で4.5Wでの動作が求められることになり、省電力と性能のバランスを重視した設計に変更されました。2014年のIDFで動作デモが公開され、14nmプロセスルールでの製造に苦労したBroadwellとは異なり、モバイルからサーバーまで幅広い製品展開を可能にしました。ただし、一般向けとハイエンド向けではアーキテクチャが分かれています。

デスクトップ向け10nmプロセスルールの開発が難航したため、SkylakeマイクロアーキテクチャはKaby Lake、Coffee Lake、Amber Lake、Whiskey Lake、Comet Lakeと6年もの間、長期にわたって使用され続けました。なお、Skylakeマイクロアーキテクチャを搭載したWindows 7およびWindows 8.1のサポート期間は、当初は2017年7月17日まで短縮される予定でしたが、後にほぼ撤回されました。さらに、Windows 11へのアップデート要件は、SkylakeのCore XシリーズやXeon Wシリーズへと緩和されました。

特徴

Skylakeマイクロアーキテクチャには、以下のような特徴があります。

14nmプロセス: Broadwellと比較して、約5.5%の性能向上を実現。
命令処理能力: 最大5命令の同時デコードと6uOPsの同時発行が可能。
アウトオブオーダリソース: 強化されたアウトオブオーダリソースにより、効率的な命令処理を実現。
DDR4メモリ: DDR4メモリに対応し、高速なデータ転送が可能。
ファイングレインパワーコントロール: 細かい電力制御により、省電力性を向上。
Intel Speed Shift Technology: CPUの動作周波数を高速に調整し、応答性を向上。
デジタルPLL: デジタルPLLを採用し、クロック信号の安定性を向上。
Intel MPX: Intel MPX(Memory Protection eXtentions)命令に対応し、メモリのセキュリティを強化。

一般向け:

Intel SGX: Intel SGX(Software Guard Extensions)命令を搭載し、ソフトウェアのセキュリティを強化。
Gen 9 Graphics: Gen 9 Graphicsを統合し、グラフィックス性能を向上。
ISP: カメラ用のISP(Image Signal Processor)を統合。
DMI3.0インターフェイス: DMI3.0インターフェイスを搭載し、高速なデータ転送を実現。
FIVR: FIVR(Fully Integrated Voltage Regulator)をオミットし、コスト削減。

ハイエンド向け:

AVX-512: AVX-512(Advanced Vector Extensions 512)を搭載し、ベクトル演算性能を向上。
FMAユニット: 512-bitのFMA(Fused Multiply-Add)ユニットを追加し、浮動小数点演算性能を向上。
L2キャッシュ: L2キャッシュを1MB/コアに拡張。
LLC: LLC(Last Level Cache)は1.375MB/コアで、ノンインクルーシブ方式を採用。
メモリチャネル: 最大6つのメモリチャネルに対応し、高速なデータ転送を実現。
メッシュバス: メッシュバスを採用し、コア間の通信性能を向上。
UPI: UPI(Ultra Path Interconnect)を搭載し、高速なチップ間接続を実現。

脆弱性

Skylakeマイクロアーキテクチャには、複数の脆弱性が存在します。インテルや各メーカーはファームウェアやOSで脆弱性の緩和を図りましたが、より効果的な対策には次世代のIce Lakeマイクロアーキテクチャを待つ必要がありました。

製品一覧

Skylakeマイクロアーキテクチャは、様々な製品に搭載されています。

デスクトップ向け:
Skylake-X (LGA2066)
Skylake-S (LGA1151)
Skylake-H
サーバー向け:
Skylake-SP (LGA3647)
Skylake-W (LGA3647)
Skylake-X (LGA2066)
Skylake-D
Skylake-S (LGA1151)
Skylake-H
モバイル向け:
Skylake-H
Skylake-U
Skylake-Y
組み込み向け:
Skylake-S (LGA1151)
Skylake-H

モバイル向けでは、Xeonのモバイル向けモデルが初めてリリースされました。Core i7では、Extreme Editionではないオーバークロック対応モデル(6820HK)が初めてリリースされました。また、従来モバイル向けでは2コア4スレッドモデルのみだったCore i5に、デスクトップ向けと同じ4コア4スレッドモデルが初めてリリースされました。Core mでは、Core m7/m5/m3とランク分けがされました。

後継

Skylakeマイクロアーキテクチャの後継となる開発コードは、当初はSkymontと呼ばれていましたが、後にCannon Lakeに変更されました。しかし、10nmプロセスルールの遅延により、計画は変更され、Skylakeと同じ14nmプロセスルールのKaby Lakeが先に登場しました。Kaby Lakeは、2016年8月に第7世代Intel CoreプロセッサとしてノートPC向けの低電圧仕様が先行発表され、その後2017年1月にノートPC向けの標準電圧仕様とデスクトップ向けが発表されました。さらに、14nmプロセスルールでCoffee Lakeが2018年に投入される予定でしたが、やや前倒しされ、2017年5月に第8世代Intel Coreプロセッサとして予告、2017年10月から順次発売されました。最終的に、Cannon Lakeは2018年5月にCore i3 8121Uとして出荷されるにとどまりました。

関連情報

Broadwellマイクロアーキテクチャ
Kaby Lakeマイクロアーキテクチャ
* Cascade Lakeマイクロアーキテクチャ

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