Sl (UNIX)

slコマンドとは

slコマンドは、[Unix系]]オペレーティングシステム(OS)で利用できるコマンドの一つです。lsコマンドをタイプミスした際に、コンソール画面上にアスキーアートで描かれた蒸気機関車]が走り抜けるアニメーションを表示します。これは、lsコマンドの入力ミスをユーモラスに表現した[[ジョークプログラムとして知られています。

slコマンドの概要

Unix系OSにおいて、lsコマンドはディレクトリの内容を表示するために頻繁に使用されます。しかし、そのタイプミスとして「sl」と入力してしまうことがあり、本来存在しないコマンドをシステムが探すために、古いコンピュータでは処理に時間がかかることがありました。この問題を回避するため、意図的に「sl」という名前のダミープログラムが作成されました。slコマンドは、このダミープログラムの一種であり、単なるミスタイプによる時間ロスをジョークとして昇華させたものです。Ctrl+Cで停止できず、数分間もSLが走り続けるため、嫌がらせと感じる人もいますが、オリジナル版はキータイプ矯正が目的であったとされています。

slコマンドの歴史

slコマンドの起源は、UNIXに慣れたソフトウェア開発者たちが、GCOS上のディレクトリリスティングコマンド「dir」の別名として「ls」を定義したことにあります。当時の端末は半二重で、コマンド入力のたびにシェルがディスクをスキャンし直すため、動作が遅く、コマンドを「sl」とタイプミスするたびに開発者が苛立ち、キーボードを叩く音がうるさかったそうです。そこで、キータイプ矯正のためにGCOS上で小野哲男氏が開発したのが最初のsl実装です。その後、鏡沼和友氏がUNIX上で動作するVT100のエスケープシーケンスに依存するバージョンをawkで実装し、さらに歌代和正氏が端末に依存しないC言語版を開発しました。このC言語版は1987年にfj.sourcesに投稿され、広く知られることになりました。現在、Linuxなど各種Unix系OSで採用されているslコマンドは、豊田正史氏が実装したものです。彼のバージョンは、以前のものよりも派手な演出が特徴で、1990年代後半から2000年代前半にかけて多くのディストリビューションに搭載され、人気を博しました。

しかし、2000年代後半以降は、GUI環境の発展によりCUI環境が軽視されるようになり、slコマンドのようなジョークプログラムは過去のものと見なされることもあります。しかし、現在でもDebianなど一部のUnix系フリーOSでは標準パッケージとして含まれており、愛好家も存在します。また、FirefoxのアドオンVimperatorには、Firefoxの機能を使った派手なslコマンドが実装されています。2013年5月5日には、豊田氏自身によってソースコードがGitHubに公開されています。

オプションについて

slコマンドには、lsコマンドでよく使われるオプションを模倣したものが存在します。具体的には、以下のようなものがあります。

- `-l`: ファイルの詳細を表示するオプションを模倣したものです。
- `-a`: ファイル名が「.」で始まる隠しファイルを表示するオプションを模倣したものです。
- `-F`: ファイルの性質を表示に付加するオプションを模倣したものです。

改造作品について

slコマンドは、その性質から様々な改造作品が作られています。例えば、以下のような改造がされています。

- 客車の数を増やし、何両目であるかを表示する。
- 踏切を追加し、遮断機の昇降演出を行う。
- 列車が往復する。

これらの改造は、プログラムをより重くし、キータイプ矯正効果を高めるという目的で作成されました。

まとめ

slコマンドは、タイプミスから生まれたユニークなジョークプログラムであり、その歴史や改造版は、コンピュータ文化の一面を表しています。現在でも一部のOSで利用可能であり、そのユーモラスなアニメーションは多くの人に楽しまれています。

外部リンク

- 豊田正史とslコマンド: 東京大学生産技術研究所戦略情報融合国際研究センター　豊田正史准教授のサイト
- SL改造計画: SL改造計画

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