Source Engine

Source Engineとは

Source Engine（ソースエンジン）は、Valve Softwareによって開発されたゲームエンジンです。id SoftwareのQuake Engineを基に、Valveが開発したGoldSrcエンジンをさらに改造したものがベースとなっています。2004年にリリースされたFPSゲーム『ハーフライフ2』で初めて採用され、その革新的なグラフィックは、当時の3Dゲームのレベルを大きく引き上げました。同時期に登場したDOOM3エンジンと共に、3Dゲームのグラフィックの進化を牽引したエンジンとして知られています。

また、Source EngineはModの制作が非常に盛んなエンジンとしても有名です。Mod専門のウェブサイトMod DBのゲームエンジン評価ランキングでは、2013年時点で1位を獲得し、2位のUnityを大きく引き離す票数を集めました。

Source Engineの特徴

Steamとの連携による自動アップデート: エンジン自体の自動アップデート機能があり、ゲームだけでなくエンジン自体も常に最新の状態に保たれます。例えば、『ハーフライフ2』の初期バージョンにはなかったHDRや自己遮蔽陰影効果も、自動アップデートを通じて利用可能になりました。
Havok社製物理エンジンの本格採用: Havok物理エンジンの導入により、『ハーフライフ2』に登場するグラビティガンなどの特徴的なゲームプレイが可能になりました。この物理エンジンは、ゲーム内のオブジェクトの挙動をリアルに再現する上で重要な役割を果たしています。
SDKキットによるMod制作の容易さ: 『ハーフライフ2』にはSDK（ソフトウェア開発キット）が付属しており、これにより多くのModが制作・公開されています。中にはValveに権利を買い取られたものも存在します。Modコミュニティは非常に活発で、多くの創造的な作品が生まれています。
エンジンの使い回しによる効率的なゲーム開発: 新しいSource Engineのゲームをダウンロードする際、既にSource Engineのゲームを所有している場合は、エンジン部分のダウンロードを省略できます。これにより、HDD容量を節約することが可能です。Source Engineには複数のバージョンが存在しますが、コア部分は共通です。
2バイト文字の公式対応: 前作のGoldSrcエンジンでは不可能だった2バイト文字の表示が、Source Engineでは可能になりました。これにより、日本語などの2バイト文字を使用する言語環境でも、ゲーム内でテキストを適切に表示できます。ただし、独自フォントを組み込むことはできません。
DirectXレベルの変更: Source Engineは、古いグラフィックボードでも動作するように、DirectXのレベルを調整できます。ただし、DirectXレベルを下げるとグラフィックの品質は低下します。DirectXのレベルを下げてパフォーマンスを向上させる方法もありますが、グラフィックボードのドライバーによっては、レベルを下げることができない場合があります。

Source Engineのバージョン

Source Engineには、Mod制作やゲーム開発の用途に合わせて、複数のバージョンが存在します。

Source SDK Base: Mod制作用のバージョンで、Steamで無料で配布されています。2006、2007、2013 Multiplayer、2013 Singleplayerの4つのバージョンがあります。これらのバージョンで制作されたModは、一般的に「SourceMod」と呼ばれますが、『ハーフライフ2』との関連がなくても「HL2MOD」と呼ばれることがあります。
初期バージョン: 『ハーフライフ2』などの初期作品で使用されていたバージョンです。
Source Engine 2006: 『ハーフライフ2 エピソード1』で使用されたバージョンで、以前はEpisode One Engineと呼ばれていました。HDRレンダリングに対応し、Mod制作用のソースコードが公開されています。
Source Engine 2007: 『The Orange Box』に含まれるゲームで使用されたバージョンです。Orange Box Engineという呼称を使う場合、Source Engine 2009や2013も含まれる場合があるので注意が必要です。Mod制作用のソースコードが公開され、多くのModがこのバージョンで制作されています。
Source Engine 2009: Valveが制作した多くのゲームで現在使用されている主流のバージョンです。ユーザーがModゲームを新規に制作することはできませんが、既存のゲームのマップやアドオンを作成することができます。
Source Engine 2013: Mod制作用のソースコードが公開されていますが、Valve制作のゲームでこのバージョンを使用しているものはありません。マルチプレイヤー用のSource SDK 2013 Multiplayerと、シングルプレイヤー用のSource SDK 2013 Singleplayerに分かれており、それぞれSourece Engine 2009とSource Engine MPのMod制作用バージョンと言えます。
Source 2: 現在Valveが開発中の、Source Engineの後継エンジンです。従来のSource Engineを拡張するのではなく、一から作り直されています。現在、『Dota 2』、『Half-Life: Alyx』、『Counter-Strike 2』で採用されています。

ゲーム固有のバージョン

『Left 4 Dead』シリーズ以降のゲームでは、各作品でエンジンの改良が加えられています。これらの改良版は他のゲームでも利用されており、ゲームごとにSDKが公開されています。

『Left 4 Dead』のエンジン（2008年）
『Left 4 Dead 2』のエンジン（2009年）
『Portal 2』のエンジン（2011年）
『Alien Swarm』のエンジン（2010年）
『カウンターストライク グローバル・オフェンシブ』のエンジン（2012年）

Source Engineで制作された主なゲーム

Valve制作のゲーム

Source 2009を使用（以前のバージョンでリリース後、Source 2009に更新されたものを含む）
Half-Life 2
Half-Life 2: Episode 1
Half-Life 2: Episode 2
Half-Life 2: DeathMatch
Half-Life: Source
Counter-Strike: Source
Day of Defeat: Source
Portal
Team Fortress 2
ゲーム固有のバージョンのSource Engineを使用
Left 4 Dead
Left 4 Dead 2
Alien Swarm: Infested
Portal 2
Counter-Strike: Global Offensive

Valve以外が制作したゲーム

Apex Legends
Black Mesa
The Crossing
Dark Messiah Might and Magic
マビノギ英雄伝
Natural Selection 2
Portal Stories: Mel
Postal III
Prime
Salvation
SiN Episodes
Sting: The Secret Operations
Titanfall
The Ship
They Hunger: Lost Souls
Twilight War: After the Fall (production resumed)
Vampire: The Masquerade – Bloodlines
Zeno Clash
ハーフライフ2 サバイバー
サイバーダイバー
Insurgency
Garry's Mod
Counter-Strike: Online 2
The Stanley Parable (2011 mod, 2013 demo, 2013 remake)
The Beginner's Guide
Infra
Kuma Reality Games
DinoHunters
Dogfights: The Game
The History Channel's ShootOut! The Game
The Kill Point: Game
KUMA WAR

Source Engineは、その柔軟性と拡張性の高さから、多くの開発者に愛され、幅広いジャンルのゲームを支えてきました。現在も後継のSource 2が開発されており、今後のゲーム業界の発展に貢献することが期待されます。

もう一度検索