T-スプライン

T-スプラインとは

T-スプライン（T-spline）は、コンピュータグラフィックスにおける自由曲面生成に用いられる数学的モデルです。Autodesk社によって開発され、同社のFusion 360などの製品で利用されています。この技術は、従来のNURBS曲面が抱える制約を克服し、より柔軟な曲面モデリングを可能にしました。

T-スプラインの特長

T-スプラインの最大の特徴は、制御点網にT字型の接続点（Tポイント）を持てる点です。NURBS曲面では、制御点の列が曲面全体を横断する必要があり、四角形のトポロジーに限定されます。しかし、T-スプラインでは制御点網の列を途中で終了させることが可能であり、これにより制御点の数を減らし、曲面のマージを容易にすることができます。

しかし、T-スプラインの自由度の高さは、頂点接続が不規則になるという副作用も伴います。そのため、頂点の接続関係を追跡するブックキーピング処理の負荷が増加します。

NURBSとの関係

T-スプライン曲面は、ノットを挿入することでNURBS曲面に変換できます。逆に、NURBS曲面はノットを削除することで、TポイントのないT-スプライン曲面に変換可能です。理論的には、NURBSで可能なことはT-スプラインでも全て実現できます。ただし、NURBSの機能を確立するために過去に膨大なプログラミングが必要だったことを考えると、T-スプラインで同等の機能を実現するには、同様の企業努力が不可欠です。

連続性と高次化

複数の曲面を滑らかに結合するために、T-スプラインは3×3次（双3次）の幾何的連続性を確保しています。近年では、4×4次（双4次）の連続性も実現可能となっています。これにより、より複雑で滑らかな曲面を表現できるようになりました。

他の曲面表現技術との関係

T-スプライン、サブディビジョンサーフェス、NURBS、ポリゴンメッシュは、それぞれ異なる特性を持つ技術であり、相互に補完的な関係にあります。

サブディビジョンサーフェス: T-スプラインやNURBSと同様に、穴、分岐、取っ手など、多様なトポロジーを持つ曲面を滑らかに表現できます。アニメーション業界で広く採用されており、特にピクサーが開発したエッジウェイト付きのサブディビジョンサーフェスは、より柔軟なモデリングを可能にします。
NURBS: T-スプラインと同様に、滑らかな曲面を表現できますが、トポロジーの制約があります。
* ポリゴンメッシュ: 曲面の交差線を正確に表現できますが、工業設計で求められるような高品質な曲面を得るのは困難です。

これらの技術は、用途や目的に応じて使い分けられ、それぞれの長所を活かしたモデリングが行われています。

T-スプラインの歴史

T-スプラインの技術は、2003年に初めて公表されました。米国特許庁は2007年に特許番号7,274,364で、T-スプラインに関連する技術を認可しました。この技術を商業化するために、2004年にはT-Splines社が設立されましたが、2011年にAutodesk社によって買収されました。

まとめ

T-スプラインは、自由曲面モデリングの分野において、柔軟性と効率性をもたらす重要な技術です。制御点の削減やピースのマージが容易である一方、頂点接続の複雑さやブックキーピング処理の負荷といった課題も抱えています。しかし、NURBSやサブディビジョンサーフェスなどの他の曲面表現技術と組み合わせることで、より高度で多様なモデリングが可能になっています。今後の更なる発展が期待される技術です。

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