T-35重戦車

T-35重戦車の概要

T-35重戦車は、ソ連の赤軍において1933年に整備された多砲塔戦車です。この戦車は、ハリコフ機関車工場で製造され、合計で63両が生産されました。特筆すべきは、T-35が史上初めて量産された5砲塔型の戦車である点です。多砲塔戦車は、以前にイギリスのA1E1 インディペンデントから影響を受けて開発されましたが、その後の経済的困難から多くの国が計画を退ける中、ソ連は「第一次五カ年計画」により開発を続けることができました。

背景と開発の経緯

1925年、世界初の多砲塔戦車であるA1E1 インディペンデントが誕生し、各国はそれに倣って多砲塔戦車の開発を始めました。しかし、世界恐慌が影響し、多くの国がその開発を中止することになりました。一方、ソ連は1929年の「第一次五カ年計画」により経済的安定を保っていたため、多砲塔戦車の開発を続けることができる状況にありました。

1930年には、赤軍内で新たな重戦車が必要であると認識され、特にインディペンデント重戦車に注目が集まりました。イギリスからの購入ができなかったため、ソ連は自主的に多砲塔戦車を設計することになりました。1933年の5月には、試作車が完成し、地域の軍事パレードに参加しました。その後、設計にいくつかの改良が加えられ、8月にはT-35として正式に制式化されました。

T-35の設計と武装

T-35は、中央に76.2mmの主砲を搭載した砲塔を持ち、さらに前部右側と後部左側には45mm副砲塔、前部左側と後部右側には7.62mm機関銃を装備した砲塔が配置されていました。これにより、合計で5つの砲塔が配置されたことになります。この多砲塔構造により、同時に複数の敵に対応が可能とされましたが、実際にはその構造が射界を制限し、砲塔同士が干渉する問題も引き起こしました。

生産と改良

T-35には生産型としてT-35A（1933年型）が55両、T-35円錐砲塔型（1939年型）が6両生産されました。また、T-35を基にした自走砲SU-14-BR2も存在します。1937年にはメカニズムの改良が施され、信頼性が向上しましたが、その重さから機動性に課題が残りました。

実戦運用

T-35は主にモスクワを防衛する部隊に配備されましたが、1940年にはその実用性に疑問が持たれるようになり前線を退きました。多砲塔戦車としての欠点が目立ち、実戦ではエンジンや変速機の故障が頻発し、多くの車両が損失を被りました。最終的に第二次大戦中にモスクワの戦いに参加したものの、運用記録は限られています。加えて、冬戦争における活躍は文献による確認が難しいため、存在自体が神話的なものになっています。

現存車両と文化的影響

現在、クビンカ戦車博物館において保存されているT-35は走行可能な唯一の車両とされ、戦後の訓練に使用されていたことから生き残っています。また、近年ロシアの企業によりT-35の忠実なレプリカが製作され、博物館に展示されています。

T-35はまた、アニメやゲームに登場することもあり、その影響は文化的にも広がっています。例えば、アニメ『ガールズ＆パンツァー』やゲーム『War Thunder』ではプレイヤーに利用可能な戦車としてパフォーマンスを示しています。

このように、T-35重戦車はその独自の設計と歴史的背景により、今なお多くの人々に記憶されています。

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