THE ANYMAL

Suchmos 3rdアルバム『THE ANYMAL』

『THE ANYMAL』は、日本のロックバンドSuchmosが2019年3月27日にリリースした3枚目のオリジナルアルバムです。自主レーベルF.C.L.Sからの初のフルアルバムとして発売されました。

背景

2019年1月20日に、前作『THE KIDS』から2年ぶりとなるフルアルバムの発売が発表されました。同日には、横浜スタジアムでのワンマンライブ「Suchmos THE LIVE」のチケット先行予約も開始されました。2月27日には、収録曲やジャケット写真などの詳細が公開され、通常盤CDと初回限定盤（DVD付）の2形態で発売されました。

アルバムに先行して、1月25日には収録曲「WATER」が配信開始されました。この曲はJ-WAVEの30周年ソングとして提供されたもので、ボーカルのYONCEがジャケットビジュアルを手掛けています。2月27日には、アルバムの題名のきっかけにもなった「In The Zoo」が配信開始されました。この曲は2018年11月の横浜アリーナのワンマンライブでも披露されており、初回限定盤DVDには、レコーディング風景を収めたストーリームービー「Join Us And Go Somewhere Nice」が収録されています。

3月3日には、「In The Zoo」と、初期の曲「Pacific」を現在のSuchmosの視点で再構築した「Pacific Blues」を収録した12インチアナログ盤が限定発売されました。「Pacific Blues」は、スタジオでの生音に近い形で聴いてほしいというメンバーの意向で、アナログ盤のみの収録となりました。ジャケットのアートワークは、YONCEとドラムのOKが担当しています。

アルバムの制作には1年以上を要し、YONCEは「結果的に周りを挑発する内容になった」と語っています。キーボードのTAIHEIによると、これまでの曲作りはジャムセッションが中心でしたが、今作ではYONCEの歌と歌詞が先行する曲が多かったとのことです。YONCEは、様々な経験から生じた日常とのギャップに悩み、「すべてが歌である」という心境に至ったと述べています。

アルバムタイトルは発売数日前に決定し、「In The Zoo」の影響を受けています。通常「ANIMAL」と綴る単語を「ANYMAL」としたのは、現代人の葛藤を表した造語であるとYONCEは説明しています。

構成

『THE ANYMAL』は、全12曲の新曲で構成されています。ほとんどの曲が5分を超え、アルバム全体で1時間以上の収録時間となります。ライターの黒田隆憲は、サブスクリプションサービスの普及によりアルバムというフォーマットが変容している中で、本作が逆行するような表現方法をとっている点を指摘しています。

オープニングナンバーの「WATER」は、リバーブを抑えたドラムサウンドと、下降していくピアノコード、躍動的なベースラインが特徴で、YONCEがファルセットと地声で歌い上げています。黒田はこの曲をレニー・クラヴィッツの初期作品と比較しています。「ROLL CALL」は、ファズギターやスプリングリバーブを用いたガレージサイケ風の楽曲です。「In The Zoo」は、アルバムのリード曲であり、ミュージックビデオも制作されました。この曲は、理性と本能の間で葛藤する人間を動物に例えた歌詞が特徴で、アルバムタイトルのきっかけにもなっています。

批評家の反応

黒田隆憲は、本作を「彼らの最高傑作」と評価し、ミニアルバム『THE ASHTRAY』で試みたプログレッシブなアプローチの到達点であると述べています。音楽評論家の柳樂光隆は、過去のアルバムと比較して音楽性の大きな変化を指摘し、サウンドの質感が60年代や70年代初頭のものになったと述べています。荒野政寿は、サイケデリックロックへの傾倒を指摘しつつ、厭世観や逃避への欲求、現実のブルース、未来への不安などが表現されていると述べています。また、ハイエイタス・カイヨーテやサンダーキャットからの影響も指摘しています。

矢島由佳子は、本作でSuchmosが表現していることを、「自分の直感を信じること」「それぞれの素直な気持ちに従い、前に進むこと」「他人を愛すること」の3つであると分析しています。また、本作は、自分たちの内面を見つめて生まれた作品であり、それが結果的に時代のあり方へのガイドとなっていると述べています。小池宏和は、本作を「コズミック・ブルース／サイケデリック・ソウル・アルバム」と呼び、ロックのロマンチックなイマジネーションを伝えていると評価しています。

チャート成績

Billboard Japanのアルバムセールスチャートでは、初登場3位を記録しました。ダウンロードチャートでは2位、総合アルバムチャートでは2位を獲得しています。

収録曲

1. WATER
2. ROOL CALL
3. Gire
4. In The Zoo
5. STA[[Y TUNE]]
6. PINKVIBE
7. YOU BLUE I
8. WHY
9. HERE COMES THE SIX-POINTER
10. MIRROR
11. A.G.I.T.
12. ENDROLL

宣伝活動

アルバムの発売に先駆け、全国10都市で全曲試聴会が開催されました。また、バンドの公式LINEアカウントでも全曲試聴会が行われました。さらに、オリジナルトラックが移動販売を行う企画「MUSIC DELIVERY」も実施されました。発売後には、YouTube公式チャンネルでライブ映像が公開され、スペースシャワーTVではアルバム発売記念特別番組「Suchmos DAY」が放送されました。

『THE ANYMAL』は、Suchmosの新たな音楽性を提示した意欲作であり、その内省的な歌詞とサイケデリックなサウンドは、多くのファンや批評家から高い評価を得ています。

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