THX 1138

『THX 1138』の世界

『THX 1138』は、1971年に公開されたアメリカの映画で、ジョージ・ルーカスにとっての監督デビュー作です。この作品は、個人の自由が制限された未来社会を描いており、ルーカスの独特な視点と映像美が光るSF映画です。映画の原作、脚本、監督をルーカスが手がけており、彼の学生時代の短編映画『電子的迷宮/THX 1138 4EB』がこの作品の出発点となっています。

制作の背景

ルーカスが1967年に制作した短編映画は、本来5分という課題に対し、20分以上の内容に仕上げました。その独創的な作品は、教授たちの期待を超え、フランシス・フォード・コッポラの資金援助を受けることになりました。しかし、公開された『THX 1138』は興行的に失敗し、配給会社が無断で短く編集したことでルーカスはハリウッドのシステムへの不信感を抱くようになります。

日本では劇場公開こそされなかったものの、テレビで放送されたりソフト化されたりし、後には『スター・ウォーズ』のリバイバル上映時に短編が併映されることもありました。さらに、2004年にはCGを用いたディレクターズカット版がDVD化され、多くのシーンで大幅な変更が施されました。この新しいバージョンにはオリジナルの公開版は収録されておらず、現在ではビデオやLDでしか観ることができない状況です。

「THX」の意味

映画に登場する「THX」という名前は、制作当初は特に意味を持っていませんでしたが、後にルーカスが設立した音質管理会社の名前として使われるようになります。また、『アメリカン・グラフィティ』や『スター・ウォーズ』シリーズでもこの数値が登場し、ルーカス作品における一種のシンボルとなっています。注目すべきは、作中では「THX」と発音されず「サックス」と呼ばれている点です。

あらすじ

この映画の物語は25世紀の地下都市を舞台にしています。人々は感情や娯楽が抑圧された単調な生活を送っており、全ての人間は番号で管理されています。主人公のTHX-1138は、自身のルームメイトであるLUH-3417との関係を通じて、自由を求めるようになります。精神安定剤の服用をやめたLUHと共に、彼は禁じられた肉体関係を結びますが、彼女が秘密を暴露され連行されると、THXは地下都市からの脱出を試みます。

THXは、次のルームメイトであるSEN-5241との交流を通して、彼自身の行動の変化を引き起こします。公園で子供たちが遊ぶシーンでは、SEN-5241が子供の頃を懐かしみ、支配される知識の装置について語ります。この装置は無意識のうちに情報をインプットするもので、彼もまた社会の規制に縛られていることを示唆しています。やがて、SEN-5241はロボットに捕まることになりますが、THXは逃げ出すことを決意します。そして、驚異的なパトカーの追跡を受けながら、彼はついに地上へたどり着くのです。

キャスト

映画のキャストには、ロバート・デュヴァルがTHX-1138役、マギー・マコーミーがLUH-3417役、ドナルド・プレザンスがSEN-5241役などが名を連ねています。これらのキャラクターは、それぞれが抱える葛藤を通じて映画全体のテーマを体現しています。

影響とオマージュ

『THX 1138』は、公開以来多くの作品に影響を与え、映画界や音楽界でもオマージュが見られます。ダフト・パンクのシングルカバーや、さまざまな映画における要素は、この作品の持つ力強さを証明しています。特に、その終わりの夕日のシーンは多くのアーティストにインスピレーションを与えました。

総じて、『THX 1138』は単なるエンターテインメントではなく、深いメッセージと独特のビジュアルスタイルを持つ作品と言えるでしょう。

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