TOPPERSライセンス

TOPPERSライセンスは、TOPPERSプロジェクトが公式にリリースする際に適用されることを想定して策定された独自のオープンソースライセンスです。このライセンスは、BSDライセンスをベースに、組込みシステム開発における特有のニーズに対応するために、いくつかの特徴的な条項が加えられています。

特徴と背景

TOPPERSライセンスの条項は、その大部分が修正BSDライセンス（宣伝条項なしのBSDライセンス）に類似しています。しかし、最も大きな違いは、特定の著作権者や団体に利用報告を行うことで、バイナリ利用時においても著作権表示を免除できる点です。この条項は、TOPPERSプロジェクトによって「レポートウェア条項」と呼ばれています。

組込みシステム開発の現場では、最終製品にどのようなソフトウェアが使用されているかを明示することを避けたいというニーズがあります。一方で、大学や公設試験研究機関では、ソフトウェアの普及度を定量的に評価する必要があります。レポートウェア条項は、これら両方の要求をバランス良く満たすための現実的な解決策として考案されました。

このライセンスは、「OSSライセンスの教科書」においても、寛容型ライセンスを理解するための重要な例として紹介されており、そのユニークなアプローチが注目されています。

バリエーション

TOPPERSライセンスには、いくつかのバリエーションが存在します。

報告先の違い: レポートウェア条項における報告先が、著作権者であるか特定の団体であるかによって異なります。コントリビュータが多数に及ぶ場合、全ての著作権者に連絡を取ることが困難になるため、TOPPERSプロジェクトでは、NPO法人TOPPERSプロジェクトを報告先とするライセンスを採用しています。しかし、古いバージョンのJSPカーネルやIIMPカーネルのソースコードでは、著作権者が報告先となっているバリエーションも確認できます。
GPLとのハイブリッド: 修正BSDライセンスがGPLライセンスと互換性があるという考えに基づき、TOPPERSライセンスにもGPLとのハイブリッド版が存在しました。しかし、TOPPERSプロジェクトが2009年1月現在で採用しているライセンスでは、GPLとのハイブリッドに関する記述は削除されています。

カーネルソース以外の開発成果物については、各ファイルに記載されたライセンス条項を確認する必要があります。例えば、TTSP(TOPPERS Test Suite Package)は、名古屋大学の高田広章氏、富士ソフトの鴫原一人氏、松浦光洋氏など、多数の著作権者が関与しており、ライセンスに関する詳細はそれぞれの関係者に問い合わせることが推奨されます。

表記言語

TOPPERSライセンスは日本語版と英語版が存在し、どちらも正本として扱われます。異なる言語版間で矛盾が生じた場合には、利用者が都合の良い方を選択することができます。

他ライセンスのソースコードとの混用

TOPPERSライセンスは、GPLとのハイブリッド版が存在したかどうかに関わらず、一般的にGPL互換であると考えられています。しかし、この見解はTOPPERSプロジェクトによるものであり、GPLを管理するFSFの見解ではない点に注意が必要です。レポートウェア条項を適用しない限り、TOPPERSライセンスはGPL互換とされる修正BSDライセンスとほぼ同等であるため、GPLとの非互換性は原則として発生しないと考えられます。ただし、(GPLハイブリッドではない)TOPPERSライセンスのソースコードとGPLライセンスのソースコードを混用する際には、利用者の責任においてライセンスの矛盾がないかどうかを慎重に確認する必要があります。

外部リンク

* TOPPERSプロジェクト／ライセンス

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