TORII HALL

トリイホールとは

トリイホールは株式会社鳥居ビルが運営している劇場であり、大阪市中央区千日前の上方ビルの4階に位置していました。1991年に設立され、約100人を収容できるコンパクトなスペースとして、落語や講談、演劇、音楽などさまざまなパフォーマンスが行われるフリースペースとして親しまれました。

歴史の背景

トリイホールの起源は、オーナーである鳥居学の祖父、鳥居鉄治郎が明治時代に建てた「西桝絹」という貸席屋にあります。鉄治郎は名古屋出身の商人で、着物の行商を通じて大阪で成功を収めました。彼は1924年に亡くなった後、妻のわさが財を成し、松竹からの要請で「大阪座」のオーナーとなりました。この劇場は戦争を乗り越え、道頓堀五座の役者たちが集まる場所として機能していました。

第二次世界大戦の影響で「西桝絹」は焼失しましたが、「大阪座」は無事でした。時代の変化とともに、役者たちの宿泊所が不足する中で、鉄治郎の跡地に旅館「上方」が設立され、後に多くの著名な芸人や役者が利用するようになりました。経営は鳥居の両親が引き継ぎましたが、1989年に廃業し、その後、息子の鳥居学は劇場を設立することを決意しました。

1991年の4月に、旅館の跡地に新たなテナントビル「上方ビル」が完成し、その4階にトリイホールがオープンしました。2009年には、トリイホールの1階下に「徳徳亭」が設立され、若手芸人の育成の場として利用されましたが、2014年には一時閉鎖し、その後「千日亭」としてリニューアルオープンしました。

トリイホールの役割

トリイホールは上方落語を中心に、古今亭志ん朝や桂米朝などの著名な落語家たちにとって特別な場所であり、ここでのパフォーマンスは多くのファンを魅了しました。特に、桂米團治が中心となって企画した「TORII寄席」は毎月1回開催され、多くの落語ファンが集まりました。また、島之内寄席や講談、さらには松竹の若手芸人による漫才の会も行われており、若手アーティストの成長を支える場となっていました。

トリイホールは、演芸界における重要な文化的拠点であり続けましたが、2019年には「一定の役割を終えた」として、2020年の3月に閉館することが決まりました。閉館期間中には「さよならトリイホール」と題した特別公演が行われ、最後の盛況を迎える予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で多くの公演が中止となり、最後のイベントも実現しませんでした。

現在のトリイホール

閉館後、トリイホールは改装され、元ホールの代表である鳥居弘昌が住職を務める真言宗の千日山弘昌寺の本堂となっています。文化と歴史が詰まったこの場所は、今でも地域に根付いた新たな役割を果たしています。トリイホールは、大阪の演芸界の一つの象徴として、その歴史を胸に秘め、次の世代に受け継がれていくことが期待されています。

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