TS-11 (航空機)

TS-11 イスクラ：ポーランド初のジェット練習機

TS-11イスクラは、ポーランドが開発したジェット練習機であり、同国初のジェット機としても知られています。その愛称「イスクラ」はポーランド語で「閃光」を意味し、その名の通り、ポーランド空軍の主力機として長年にわたり活躍しました。

開発の経緯

TS-11の開発は、ポーランド空軍が運用していたTS-8ビェス練習機の後継機として、1957年に航空機製作センター（OKL）によって開始されました。1960年2月5日には初飛行に成功し、その後、輸送機器生産センター（WSK）が開発を引き継ぎ、PZL（ポーランド航空機工場）で製造が行われました。1963年3月からはポーランド空軍への引き渡しが開始されました。

設計の特徴

TS-11は中翼式の主翼を持ち、主翼の付け根部分に空気取り入れ口があります。エンジンは操縦席後方の胴体内に搭載され、機体下部に排気口が設けられています。ブーム状の尾部に尾翼を持つ独特な形状をしています。初期の生産型では国産のHO-10軸流式ターボジェットエンジン（推力800kg）が搭載されましたが、後にSO-3ターボジェットエンジン（推力1,000kg）に換装されました。

機首右側には23mm機関砲が1門装備され、主翼下のハードポイントには爆弾や機銃ポッド、ロケット弾ポッドなどを搭載可能です。このため、軽攻撃機としても使用されました。また、後席を撤去して燃料タンクを追加した攻撃型や偵察型も製造されました。

運用実績

TS-11は、1982年に後継機としてPZL I-22が開発されましたが、1990年代に計画が中止されたため、M-346が配備されるまで、長らくポーランド空軍のジェット練習機の主力として運用されました。

また、曲技飛行隊「ロムビック」では、1969年からTS-11を採用し、「ビアノチェルバーノ・イスクリ」（「赤と白の閃光」の意味）と改名してからも使用されました。海外では「チーム・イスクラ」としても知られています。航空ショーでは、初等練習機であるPZL-130を操縦するオルリク・エアロバティックチームとの共演も行われました。

TS-11は、1962年のワルシャワ条約機構加盟国共同練習機の候補にもなりましたが、チェコスロバキア製のアエロ L-29 デルフィーンに敗れました。しかし、1975年にはインド空軍から50機を受注し、インドでも運用されました。インド空軍では、2004年12月16日に退役するまでに7機が事故で失われ、4名のパイロットが殉職しています。

各型

TS-11：原型機。
TS-11bisA：初期生産型。主翼下ハードポイントは2ヶ所。
TS-11bisB：bisAの改良型。主翼下ハードポイントは4ヶ所。
TS-11bisC：偵察機型。機首左側に偵察カメラを搭載。
TS-11bisD：bisBの改良型。インド空軍向けに改良された機体。
TS-11bisDF：最終生産型。攻撃能力が強化され、エンジンがSO-3W（推力1,100kg）に換装。
TS-11R：海軍向けの複座軽攻撃機。機首にRDS-81探知レーダーを搭載。1991年に空軍が6機を導入。
TS-11 BR 200：1972年に開発された単座攻撃機型。試作のみ。
TS-11MR：近代化改修機。1988年からビアノチェルバーノ・イスクリ向けに配備。
TS-11「イスクラ・ジェット」/TS-11「スパーク」：退役したTS-11をアメリカ、オーストラリア向けの民間アクロバット機として売却した際の名称。
TS-11F：ヘッドアップディスプレイを追加装備した近代化改修機。ポーランド空軍が配備を進めているF-16C/D Block 52アドバンスドに対応。

主要諸元

全長：11.15m
全幅：10.06m
全高：3.50m
自重：2,560kg
最大離陸重量：3,840kg
エンジン：WSK SO-3（推力1,000kg）1基
最高速度：388kt (719km/h)
巡航速度：324kt (600km/h)
航続距離：637nm (1,180km)
乗員：2名

関連項目

練習機の一覧
L-29 デルフィーン
G-2 ガレブ
* テムコ TT

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