TSI

TSIエンジン：フォルクスワーゲンの革新的技術

フォルクスワーゲンのTSI（Turbocharged Stratified Injection）エンジンは、優れた動力性能と燃費効率を両立させた革新的なガソリンエンジンです。その特徴は、ツインチャージャーまたはターボチャージャーとガソリン直噴技術（FSI）を組み合わせている点にあります。アウディでは同じ技術をTFSIとして採用しています。

TSIエンジンの歴史

TSIエンジンの開発には、フォルクスワーゲンが既に実用化していたディーゼルエンジンのTDI技術が活かされました。2005年、ゴルフGTに搭載された1.4L直列4気筒DOHC16バルブのFSIエンジンがTSIエンジンの始まりです。この初期モデルは、スーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせたツインチャージャーシステムを搭載していました。最高出力はソフトウェア制御により170馬力、160馬力、140馬力の3種類が設定されていました。

2007年には、コストを抑えたシングルチャージャーモデルが登場しました。これはターボチャージャーのみを搭載した1.4Lエンジンで、ゴルフの下位グレードに搭載されました。その後、1.2LエンジンにもTSI（シングルチャージャー）が採用され、ポロやゴルフといった幅広い車種に搭載されるようになりました。現在では、1.0Lから3.0Lまで、様々な排気量のTSIエンジンがラインナップされています。

TSIエンジンの仕組み

ツインチャージャー搭載のTSIエンジンでは、低回転域ではスーパーチャージャーが作動し、回転数の上昇とともにターボチャージャーも作動を始めます。さらに高回転域ではスーパーチャージャーが切り離され、ターボチャージャーのみが作動します。このシステムにより、低回転域から高回転域まで、常に力強いトルクを得ることができます。

シングルチャージャー搭載のTSIエンジンでは、低回転域からターボチャージャーが作動します。従来の高出力志向のターボエンジンとは異なり、TSIエンジンはダウンサイジングを前提として開発されました。小排気量化によって燃費を向上させつつ、ツインチャージャーやターボチャージャーによって必要な動力性能を実現するというコンセプトです。

TSIエンジンの燃費性能

TSIエンジンは、小排気量でありながら、大きな排気量のエンジンと同等の出力とトルクを達成しています。例えば、1.4LツインチャージャーTSIエンジン（DSG搭載モデル）は、2.4L自然吸気エンジンと同等の動力性能を持ちながら、燃費は1.6L自然吸気エンジン並みに抑えています。また、1.4LターボチャージャーTSIエンジン（シングルチャージャー、DSG搭載モデル）は、2.0L自然吸気エンジンと同等の動力性能を持ちながら、従来のモデルよりも20%高い燃費を実現しています。この優れた燃費性能は、ECUプログラムの改良、DSGトランスミッションの採用、低燃費タイヤの採用、空力デザインの向上など、様々な要因が複合的に作用した結果です。

TSIエンジンの多様性とコスト削減

TSIエンジンは、ECUプログラムや過給機の変更によって、様々なエンジン特性を設定できます。そのため、多様な出力レンジをカバーするのに、多くのエンジンを新規開発する必要がなく、開発コストの削減に貢献しています。これは、特にディーゼルエンジンにおいて、フォルクスワーゲンだけでなく多くの欧州自動車メーカーで採用されている手法です。

シングルチャージャーモデルの登場

ツインチャージャー搭載のTSIエンジンは、構造が複雑で、重量もかさむため、コスト高になるというデメリットがありました。そのため、コストパフォーマンスに優れたシングルチャージャーモデルが開発されました。シングルチャージャーモデルは、構造がシンプルで、軽量であり、ツインチャージャーモデルよりも優れた燃費性能を実現しています。低回転域からの高トルク化のため、小径のロープレッシャーターボが採用されています。

エンブレムと燃料

TSIのエンブレムは、エンジンの仕様によって赤文字が入ったり、入らなかったりする点が特徴です。また、エンジンの性能を十分に発揮させるために、フォルクスワーゲンはオクタン価96以上の高オクタンガソリンとVW504.00規格のエンジンオイルの使用を推奨しています。

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