TWIN SIGNAL

TWIN SIGNAL（ツインシグナル）

大清水さちが手掛けた日本の漫画作品、及びそれを原作としたメディアミックス作品群。エニックス社の雑誌『月刊少年ガンガン』で1992年12月号から連載が始まり、後に『月刊Gファンタジー』へ移籍、2001年12月号まで足掛け10年にわたり連載された。移籍時に『TWIN SIGNAL A-ナンバーズ抹殺計画』と改題されている。

当初は読み切り作品として発表され、好評を受けて本格連載へと発展した。作者の本格デビュー作であり、単行本は全19巻、文庫版は全11巻が刊行されている。また、外伝作品『呪われし電脳神 TWIN SIGNAL外伝』も存在する。

物語は、最新鋭の人型ロボット（ヒューマンフォームロボット、HFR）であるシグナルを中心に展開する。連載当初はロボットと人間との心温まる交流をコミカルに描いていたが、やがてロボットの存在意義や人間社会におけるHFRのあり方といった、よりシリアスで深いテーマへと焦点を移していく。

1996年にはOVA化もされており、主要な登場人物や物語の一部がアニメーションとして映像化されている。

あらすじ

物語は複数の章に分かれて進行する。

トッカリタウン編

日本の片田舎にあるトッカリタウンに引っ越してきた小学生、音井信彦。HFR製作の世界的権威である祖父・音井信之介から、最新型HFRのシグナルを「兄」として与えられる。シグナルは、金属からゴム状など多様な形態に変化可能な特殊金属「MIRA」を用いた世界初のロボットだった。しかし、初回起動時のアクシデントにより、信彦のくしゃみに反応して身長数十cmの幼児姿「ちび」と本来の姿に変形するバグが発生してしまう。こうして誕生したシグナルと信彦は、個性豊かな町の住人たちと共に騒がしい日常を送る。

リュケイオン編

人間そっくりのHFRはシンクタンク・アトランダムという研究機関によって製造・管理されており、「A-ナンバーズ」と呼ばれる。シグナルもその最新型【A-S SIGNAL】である。シンクタンク主催のロボット博覧会参加のため海上都市リュケイオンを訪れたシグナルたちだが、そこに未完成のまま封印されていたはずのロボット【A-A ATRANDAM】が現れ、自らを封印した科学者への復讐を企てる。この事件を通して、人とロボットの関係性における問題や、道具として扱われてきたロボット【A-K KARMA】の内面が描かれる。

オラクル編

トッカリタウンでの穏やかな日々の中、研究機関の上位ネットワーク＜ORACLE＞に異常が発生。シグナルは兄機であるオラトリオと共に、謎の侵入者を追って電脳空間へとダイブする。

シンクタンク・アトランダム編

突如知らされたアトランダム総帥Dr.クエーサーの訃報を受け、信彦たちはシンガポールにある総本部へ向かう。集結するA-ナンバーズたちだが、その裏ではDr.クエーサーの遺したHFR【A-Q QUANTUM】が秘密裏に活動を開始していた。クエーサーの遺志を継ぐと語る彼らの真の目的とは何か、戦いは激化していく。

A-ナンバーズ抹殺計画編（完結編）

Dr.クエーサーの意図は「HFRは危険な存在であり、全てを破壊すべき」というものであり、これはアトランダムの存在意義を揺るがすものだった。シンクタンクはHFRを守るため、A-ナンバーズの封印を決定する。しかし、シグナルは封印を拒否し、信彦も科学者たちの決定に反発。二人は脱走し、仲間と共に事態解決のため最後の戦いへと向かう。クオンタムの本拠地では、Dr.クエーサーの脳をHFRボディに移植する計画が進行していた。A-ナンバーズ抹殺計画は、Dr.クエーサーが抱いた「人ではないHFRとは何か、その存在意義は？」という疑問から発端しており、自らの死期を悟った彼が、クオータに「A-ナンバーズと戦い、全てを破壊せよ」と命令した「ゲーム」だった。クオータは忠実に命令を実行するが、Dr.の余命が少ないことを知り、独断で脳移植を計画。最終的に、シグナルたちは移植されたDr.クエーサーと対峙し、暴走した動力源SIRIUSをシグナルが命懸けで制御。大破するも修理され、平和な日常を取り戻す。

主な登場人物

【A-S SIGNAL】シグナル: 本作の主人公HFR。最新技術が詰め込まれているが、起動時の事故で信彦のくしゃみで幼児化するバグを持つ。格闘好きで正直な青年姿と、チョコ好きな無邪気な幼児姿（ちび）を持つ。
音井信彦: 本作の人間側の主人公。小学生。シグナルを兄として慕い、彼を幼児化させるくしゃみ体質を持つ。聞き分けが良いが、芯の強い性格。
【A-K KARMA】カルマ: 海上都市リュケイオンの統括を目的として作られたHFR。高スペックで家事も得意。音井正信とは兄弟のような関係。
【A-O ORATORIO】オラトリオ: 音井ブランドの長兄。情報処理に特化しており、電脳空間の守護者。普段は軽薄だが、使命には容赦がない。
【A-P PULSE】パルス: 音井ブランドの次兄。炭素素材で構成された戦闘型HFR。音井正信による改造で強化された。後にシグナルに強い対抗意識を持つようになる。
【AE1-α ELARA】エララ: 看護専門HFRで、MIRAを扱える唯一のロボット。本作のヒロイン的存在。トッカリタウンの廃遊園地で暮らしている。
音井信之介: 信彦の祖父で、シグナルの製作者。「ロボット工学界未曾有の天才」と称される。現在は半隠居。
音井正信: 信彦の父。ロボット工学者でソフト開発に強い。元ハッカーでアトランダムの情報統括部門局長。パルスを改造した張本人。
音井みのる: 信彦の母。ロボット心理学が専門。幼少期の事故が原因で火炎恐怖症を持つ。Dr.カシオペアの養女。
クリス＝サイン: ロボット製作者見習い。サイン財閥令嬢だが、音井家に居候。パルスに初恋してロボット工学の道へ進んだ天才少女。

その他、多様なA-ナンバーズや個性的な人間たちが登場し、物語を彩る。

用語解説

MIRA（ミラ）: 音井信之介が発見した特殊金属。形態変化や情報蓄積が可能で、シグナルやコードなどの体に用いられている。
SIRIUS（シリウス）: 光をエネルギーに変換する結晶。製作が難しく、シグナルの動力源として唯一使用されている。
ORACLE（オラクル）: 研究機関専用の情報管理ネットワーク、及びその空間統御プログラム。高いセキュリティを持つが、ハッカーの標的となりやすい。
シンクタンク・アトランダム: より人間に近い高性能ロボット開発を目指す研究機関。HFR「A-ナンバーズ」を製作・管理する。
* 音井ブランド: ロボット工学者・音井信之介が単独で製作した優秀なHFRの総称（主にラヴェンダー、オラトリオ、パルス、シグナル）。

メディア展開

漫画以外にも、OVA（全3話）、小説（全10巻）、ドラマCD、サウンドトラックCDなどが発売されている。2019年からはWeb漫画サイトARTstreetにて続編『TWIN SIGNAL Biennial』が連載されている。

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