TerraSAR-X

TerraSAR-X（テラサーエックス）

TerraSAR-Xは、2007年に打ち上げられたドイツの地球観測衛星で、商用画像サービス用の合成開口レーダーを搭載した世界初の衛星です。この衛星は、従来のLバンド衛星に比べて高い地表解像度を提供し、特に科学研究や商業利用において重要な役割を果たしています。さらに、2010年に打ち上げられたTanDEM-X衛星との連携により、3次元的な地形データの取得も実現しています。

1. 概要

TerraSAR-Xは、ドイツ連邦教育研究省（BMBF）とEADSアストリアムの官民共同プロジェクトとして構築されました。その主な目的は、高精度な地表画像を取得することです。プロジェクトの予算は1億3000万ユーロにのぼり、そのうちの大部分はドイツ航空宇宙センター（DLR）が拠出しました。衛星の製作は2002年から始まり、衛星はドイツ南部のフリードリヒスハーフェンで製造されました。TerraSAR-Xは、長さ4.9mの六角柱形状をしており、その一面には合成開口レーダーのアンテナアレイが取り付けられています。

衛星は2007年6月15日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、太陽同期軌道に投入されました。衛星の運用はDLRが管理し、GSOC（ドイツ宇宙オペレーションセンター）を通じて制御されています。

2. 運用

TerraSAR-Xは、科学研究と商業利用の2つの目的に応じた運用を行っています。撮影された画像は科学目的でDLRから配布され、商業顧客にはアストリアムの子会社であるInfoterra社を介して販売されます。加えて、自然災害や突発的な出来事にも役立てられています。

特に2011年の東日本大震災では、DLRが国際災害チャータを通じてTerraSAR-Xの画像を提供し、日本国内でも現地代理店が災害支援のために津波の影響を受けた地域の衛星画像を撮影・公開しました。また、2013年には南極の撮影を行い、そこで確認された大規模な氷山の形成に関するデータを取得しました。

3. 観測機器

TerraSAR-Xは、Xバンド合成開口レーダーTSX-SAR（TerraSAR-X SAR instrument）を搭載しています。このレーダーは波長3.1cm（周波数9.65GHz）のマイクロ波を使用し、曇りや夜間でも撮影が可能です。異なる解像度と撮影範囲を持つ4つの観測モードがあります。最も高解像度なSpotLightモードでは、地上分解能1mで撮影範囲は5×10kmです。一方、ScanSARモードでは地上分解能16mで100×1500kmの範囲をカバーします。

また、TanDEM-X衛星も同様のレーダー装置を搭載しており、二つの衛星が協調して干渉合成開口レーダー（InSAR）を形成することで、非常に高精度な標高データを取得することができます。さらに、レーザー光通信の実験機器と衛星追跡用のレーザー反射器も装備されています。

TerraSAR-Xプロジェクトは、地球観測における重要な技術を提供しており、今後の関連研究や商業利用の発展に寄与することでしょう。

もう一度検索