The 7th Blues

B'z アルバム『The 7th Blues』解説

『The 7th Blues』（ザ・セヴンス・ブルーズ）は、日本のロックユニットB'zが1994年にリリースした2枚組のオリジナルアルバムです。前作『RUN』から約1年5ヶ月ぶりとなるこのアルバムは、B'z初の2枚組作品であり、全20曲というボリュームで、その音楽性の幅広さを示しました。

アルバム概要

アルバムタイトルは、7枚目のオリジナルアルバムであることと、ブルース音楽でよく使われる「7thコード」に由来しています。松本孝弘は、このタイトルが「酔った時の思いつき」であったと語っていますが、アルバムの内容はブルースに留まらず、ジャズ、ソウル、サイケデリックなど様々なジャンルを取り入れた意欲的な作品となっています。ブラスセクションを多用し、多様な楽器が使用され、演奏時間の長い楽曲が多いのも特徴です。収録曲の半数が5分を超え、6分を超える曲も6曲あります。

歌詞カードには、楽曲ごとに松本が使用したギターが記載されているのもファンには嬉しいポイントです。

制作背景

松本は、2枚組アルバムの制作について「作っていくうちに少し欲が出て、『2枚組もどうか？』という話も出た」と語っており、当初は弱気になったものの、後半になるにつれて「ここまで来たらいこう！」と決意したそうです。楽曲制作においては、同じような曲を作らないことや、バリエーションを考えるのではなく、出来たものからどんどんレコーディングしていったと述べています。稲葉浩志は、本作の制作を自然な流れの延長と捉え、通常のアルバム制作と変わらず、時間をかけて丁寧にレコーディングを行ったと語っています。

前作『RUN』以降にリリースされたシングルのうち、「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」と「裸足の女神」は、本作には収録されていません。また、需要の減少により、本作を最後にカセットテープの生産・販売が中止されました。ミキシングエンジニアは、後にグリーン・デイなどを手掛けるクリス・ロード・エルジが担当し、レコーディングには東京スカパラダイスオーケストラなど、多くのミュージシャンが参加しています。

当時のインタビューで松本は、これまでは売れる作品を意識してきたと認めつつも、本作では自分たちのルーツを表現し、それを次世代に伝えたいという意識があったと語っています。また、2008年には「『The 7th Blues』は当時の邦楽で一番洋楽の音に近く、そこから洋楽を聴く人が増えた」と評価されており、「邦楽と洋楽の距離を縮めた啓蒙的作品」という側面も持っています。稲葉も当時、「これからの基本姿勢ができた」と本作を気に入っており、松本も後に「大きなターニングポイントとなった」と語っています。2018年には、結成30周年を記念して、本作を含むオリジナルアルバムがアナログレコード化されました。

記録

オリコンチャートでは3週連続1位を獲得し、累計売上は約163万枚を記録。2枚組オリジナルアルバムとしては、史上初のミリオンセラーとなり、2枚組以上のオリジナルアルバムとしては歴代最高の売上を記録しました。

収録曲と楽曲解説

DISC 1

1. LOVE IS DEAD
外国人の電話での会話から始まる楽曲。シリアスな歌詞と、打ち込みのオルガン、生のブラスセクションが特徴。ライブでは電話の会話部分が変更されたり、カットされたりすることがある。
2. おでかけしましょ
1994年の『ミュージックステーション』で「Don't Leave Me」と共に披露された楽曲。ライブではアンコールラストナンバーとして演奏されることが多い。
3. 未成年
大人の世界に受け入れられない未成年を歌った曲。ギターソロ後の間奏ではサンプリングループが使用され、エンディングはジャズ的なアプローチになっている。
4. 闇の雨
2013年のライブで約19年ぶりに演奏され、DVD化された楽曲。ライブでの演奏頻度が比較的高い。
5. MY SAD LOVE
昔の恋に悩む女性と付き合う男性の感情をテーマにした曲。ライブでの演奏頻度は低い。
6. Queen of Madrid
マドリードを女性目線で歌った歌詞が特徴。
7. ヒミツなふたり
倦怠期のカップルを男性目線で描いた歌詞が特徴。歌詞中の「男は無口な方がいいと誰か 歌ったなあ」は、八代亜紀の「舟唄」が元ネタ。
8. Strings of My Soul
松本孝弘のギターがメロディを奏でるインストゥルメンタル。ライブで披露されていたものがアルバムに収録された。
9. 赤い河
約1分40秒のストリングスイントロが特徴の楽曲。ライブでも演奏される。
10. WILD ROAD
ハモンドオルガンとディストーションギターが特徴。B'zの楽曲で唯一、メンバー以外の女性がメインボーカルを担当している部分がある。

DISC 2

1. Don't Leave Me
先行シングルとしてリリースされた楽曲。
2. Sweet Lil' Devil
ギターリフやバンドの一体感が特徴。ギターソロ後のパートではレッド・ツェッペリンの「HeartBreaker」の間奏を演奏している。
3. THE BORDER
ストリングスアレンジが前面に出た楽曲。ライブでは未演奏。
4. JAP THE RIPPER
1993年のライブで初披露された楽曲。2023年のライブで約22年ぶりに演奏された。
5. SLAVE TO THE NIGHT
過去の楽曲をリメイクした全英詞の曲。ジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」のイントロを引用している。
6. 春
泣きのギターが特徴のバラード。ライブでも演奏されることが多い。
7. 破れぬ夢をひきずって
シンセとギターが絡み合うイントロと、ストリングスによるスローテンポなアウトロが特徴。
8. LADY NAVIGATION
8thシングルの全英詞リメイク。アコースティックバージョンで、ライブで披露したものが元になっている。
9. もうかりまっか
おもちゃの銃の電子音で始まる。関西弁の歌詞が特徴で、メンバーの名前も登場する。メンバー紹介の際に演奏されることがある。
10. farewell song
ブラスセクションから始まる楽曲。ビートルズの「ヘイ・ジュード」を意識したエンディング。

参加ミュージシャン

松本孝弘、稲葉浩志に加え、明石昌夫、青山純、増田隆宣、小野塚晃、厚見玲衣、勝田かず樹、数原晋、JAKE.H.CONCEPTION、DE LA LUZ HORN SECSSION、SKA-PARA HORNS、菅坂雅彦、横山均、村上準一郎、西山健治、山岸博、飯笹浩二、妹尾隆一郎、日色ストリングス、日色純一、高嶋りん、岩切玲子、生沢佑一、MICHELLE MURPHY、KURT SCHAELER、CAROL DAVIS、BILL KINSLEY、JEFF LOAD-ALGE、KOJI NUMAZAKI、J.D.COUNTSなど、多くのミュージシャンが参加しています。

ライブ映像作品

各楽曲は、ライブ映像作品として多くの映像が残されています。

LOVE IS DEAD
おでかけしましょ
闇の雨
Strings of My Soul
赤い河
JAP THE RIPPER
春
もうかりまっか

まとめ

『The 7th Blues』は、B'zの音楽性を大きく広げたターニングポイントとなるアルバムです。2枚組というボリュームと、多様なジャンルを取り入れた楽曲は、聴き応え十分です。B'zファンはもちろん、幅広い音楽ファンにおすすめできる作品と言えるでしょう。

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