This is a "Boogie"

This is a "Boogie"（ズィス・イズ・ア・ブギー）

「This is a "Boogie"」は、日本の歌手である桜田淳子が1981年9月に発表した、通算36枚目にあたるシングル楽曲である。

当時の日本の音楽シーンを牽引するトップアイドルの一人として活躍していた桜田淳子が、精力的なリリース活動を続ける中で生み出されたこの楽曲は、そのサウンドはもちろんのこと、いくつかの特筆すべきエピソードと共に、今なお多くのファンの記憶に残っている。

楽曲の制作陣は、作詞を実川俊が、作曲を小田裕一郎が、そして編曲を大村雅朗がそれぞれ担当した。作曲者の小田裕一郎は、山口百恵の「横須賀ストーリー」やピンク・レディー、松田聖子といった同時代の人気アーティストに数々のヒット曲を提供しており、キャッチーかつ力強いメロディ作りを得意とした。また、編曲の大村雅朗も、松田聖子の初期の多くの楽曲や、多数のアーティストのサウンドを支えた日本を代表するアレンジャーである。この強力な布陣によって、「This is a "Boogie"」は、当時の歌謡曲の枠を超えた洗練されたポップサウンドへと昇華された。タイトルに冠された「Boogie」の文字が示す通り、リズミカルで躍動感あふれる楽曲であり、桜田淳子の表現力豊かなボーカルがその魅力を一層引き立てている。

この楽曲にまつわるユニークなエピソードとして、リリース直前の情報に関するものがある。発売に先立って発行された月刊明星誌上での記事において、楽曲のタイトルが実際のものとは異なり「ダ・メ・ヨ」と記載されていた時期があったとされている。最終的には「This is a "Boogie"」として正式に発表されたが、こうした先行情報と実際の商品との間の違いは、当時のファンにとってはちょっとしたサプライズや混乱を招く出来事であったかもしれない。

さらに、この楽曲を語る上で避けて通れないのが、発表年の年末に放送された「第32回NHK紅白歌合戦」でのパフォーマンスである。桜田淳子は、この「This is a "Boogie"」で同番組に出場した。その際、彼女の歌唱順の直前に自身の楽曲「もしもピアノが弾けたなら」を歌い終えた俳優の西田敏行が、異例にもそのままステージに残り、桜田淳子のパフォーマンスの途中まで、相手役を務めるという形で共演を披露したのである。通常、出演者が自身の出番を終えた後も他の出演者のステージに継続して参加することは極めて稀であり、このサプライズかつユニークな演出は視聴者に強いインパクトを与え、当時大きな話題となった。歌手としてだけでなく、エンターテイナーとしての桜田淳子の存在感を示す、記憶に残るパフォーマンスであったと言えるだろう。

シングルのカップリング曲（B面）には「刹那Tic」が収録されている。こちらは作詞を麻木かおる、作曲を矢野顕子が担当し、A面と同じく大村雅朗が編曲を手掛けた。矢野顕子は個性的な音楽世界を確立しているシンガーソングライターであり、彼女がアイドルに提供した楽曲という点でも注目される。「刹那Tic」は、「This is a "Boogie"」の持つ明るくリズミカルな雰囲気とはまた異なる、内省的あるいは叙情的な側面を持つ楽曲である可能性があり、シングルの両面で桜田淳子の多様な表現力を楽しむことができる構成となっている。

「This is a "Boogie"」は、桜田淳子の数あるシングルの中でも、特にメディアでの露出やエピソードが多く、リスナーの記憶に残りやすい楽曲の一つと言える。その証拠に、後に発売されたベストアルバムである『GOLDEN☆BEST 桜田淳子 コンプリート・シングル・コレクション』など、彼女の楽曲を集めた主要なCDコレクションにも繰り返し収録されており、現在でも彼女の代表曲として多くのファンに愛され続けている。1981年という年は、日本の歌謡曲・ポップスシーンが新たな潮流を生み出しつつあった時期であり、この楽曲もまた、その時代背景の中で独自の輝きを放っていたと言えるだろう。楽曲そのものの魅力に加え、付随するエピソードや紅白での印象的なパフォーマンスが、この曲を単なる一曲に留めず、物語性を持った作品として、長く語り継がれる要因となっている。

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