Thrill Kill

『Thrill Kill』: 未発売の挑発的格闘ゲーム

『Thrill Kill』は、1990年代半ばに開発されたPlayStation用の対戦アクションゲームで、地獄を舞台に現世への復活を望む10人の魂たちの戦いを描いています。このゲームは、血しぶきが飛び交う残虐性や強い性的表現が特徴であり、最大4人まで同時にプレイできることも特長の一つでした。

開発の背景と経緯

開発元のパラドクス・デベロップメントは、最初はメソアメリカの球戯を基にしたスポーツゲーム「Earth Monster」を企画していましたが、ヴァージン・インタラクティブからの要望によって暴力性が強調された格闘ゲームへと転換することになりました。その後、原案は古代アステカ文明をテーマにしたものからBDSMに変更され、内容がより挑発的なものへと変わりました。

プロデューサーのハーバード・ボーニンは、特殊な攻撃システムやキルメーターシステムを導入し、プレイヤーに攻撃的な戦術を促しました。また、アシスタントプロデューサーのブライアン・ゴメスは、ミュージカル『キャッツ』から刺激を得たストーリーラインを考案し、登場キャラクターには個性的なバックグラウンドが設定されました。

ゲーム内容

本作の主なモードは、Team、Arcade、Practiceの3つです。TeamおよびArcadeモードでは、最後の一人を目指してプレイヤー同士がバトルを繰り広げます。キャラクターたちは奇抜なデザインと特異な武器を持っており、まさに「肝試し」とも言える刺激的な戦いが展開します。

開発の頓挫とその後

1998年に本作は発売予定でしたが、ヴァージン・インタラクティブがエレクトロニック・アーツに買収されると、EAの役員会はゲームの内容が暴力的すぎると判断し、販売の中止を決定しました。この時点でゲームはほぼ完成していたにもかかわらず、小売店での販売が現実のものとはなりませんでした。

その後、開発者たちはインターネット上でROMイメージが流出したため、『Thrill Kill』は未発売ながらも多くのプレイヤーに親しまれることとなりました。この事が後のゲームデザインにも影響を与え、パラドクスは新たなタイトル「Wu-Tang: Shaolin Style」を制作し、1999年にリリースしました。

評価と反響

『Thrill Kill』は、2004年秋号のOfficial U.S. PlayStation Magazineで「好点はあるが、駄作である」と評価された他、2009年にはGameInformerで「実現しなかったゲームトップ10」の10位にランクインしました。また、GameProでも登場人物の一人が高く評価されています。

暴力性だけでなくキャラクター設定に対する倫理的疑問も指摘される中、本作は日本のゲーム専門サイト「Game*Spark」においてもその独特な内容が話題にされています。

登場キャラクター

このゲームには、多様で個性的なキャラクターが多数登場します。例えば、ベラドンナはサディスト的な性格を持つ図書館員、ザ・インプは竹馬に乗る小男、クレータスは人肉入りソーセージを売る肉屋など、各キャラクターの元となった背景が興味を引きます。

まとめ

『Thrill Kill』はその過激さゆえに発売を果たさなかったものの、インターネットの力によって多くのゲーマーたちに触れられることとなりました。パラドクス・デベロップメントにとっても大きな影響を及ぼす作品となり、その後のゲームデザインやキャラクター展開に新たな方向性を与えることとなりました。

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