UCIプロツアー

UCIプロツアー：自転車ロードレースの革新と終焉

UCIプロツアーは、2005年から2010年まで国際自転車競技連合（UCI）が主催した、ロードレースのシリーズです。従来のUCIワールドカップを刷新し、自転車ロードレースの人気回復と一極集中からの脱却を目指して導入されました。

概要

近年、ヨーロッパを中心に自転車ロードレースの人気低下が顕著になり、「ツール・ド・フランス」への一極集中が問題視されていました。UCIは、旧ワールドカップで浮上した諸問題を解決し、人気回復のための改革としてプロツアーを導入しました。UCIは、厳格な審査を課した上で20のプロツアーライセンスを発行し、チームはライセンス料を支払うことで、プロツアーに組み込まれた全てのレースに出場する義務を負いました。

しかし、プロツアー制度の施行直後は、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャといった世界3大ツールも組み込まれたため、参加チームはこれらの有力レースへの出場権を自動的に確保できるというメリットがありました。しかし、2007年からはグランツールへの出場権は各レースの主催者が独自に付与することとなり、この恩恵は薄れました。

UCIはレースごとに獲得ポイントを定め、年間累計ポイントでリーダーを決定しました。また、プロツアーの下部組織として、大陸ごとに5つのコンチネンタルサーキットを創設しました。プロツアーに組み込まれたレースには、プロチームに加えて、プロフェッショナルコンチネンタルチームを中心とした数チームのみがワイルドカードとして出場できました。

2008年には、プロツアーライセンスを保持する17チームが、翌年以降のライセンス更新を行わないことを共同で表明し、グランツール主催者と共同で新しい制度を構築することを発表しました。これにより、プロツアー制度の継続が危ぶまれる事態となりました。

チームのカテゴリー

UCIプロツアーには、以下のカテゴリーのチームが参加していました。

UCIプロチーム：プロツアー全レースへの出場義務があります。
プロフェッショナルコンチネンタルチーム：コンチネンタルサーキットを主戦場とします。
コンチネンタルチーム：プロとノンプロの混成チームです。
ナショナルチーム：国の代表チームです。
地域チーム／クラブチーム：地域に根ざしたチームです。

レースポイント配分

レースの種類やカテゴリーに応じて、ポイント配分が異なっていました。ステージレースやワンデーレース、区間成績などに応じてポイントが付与され、年間を通じてランキングが決定されました。

参加チーム

AG2R・ラ・モンディアル、アスタナ・プロチーム、エウスカルテル・エウスカディなど、多くの有力チームがUCIプロツアーに参加していました。

諸問題

UCIプロツアーは、様々な問題に直面しました。

ドーピング問題：自転車ロードレース界に常につきまとう問題であり、プロツアー制度導入後も多くの選手がドーピング違反で処分されました。
若手育成：即戦力選手の獲得に走り、若手の育成がおろそかになるという指摘がありました。
メディアへの露出機会の増加：スター選手の出場規定が設けられましたが、メディアへの露出が増したかについては疑問が残りました。
地方レースの衰退：プロツアーへの出場義務により、トップ選手が地方レースへの参加が難しくなり、地方レースが衰退しました。
グランツールとの主導権争い：ツール・ド・フランスなどのグランツール主催者とUCIとの間で、主導権争いが繰り広げられました。

グランツールとの主導権争い

プロツアー制度の導入により、グランツール主催者は出場チーム選考の権限を事実上UCIに奪われることとなりました。グランツール主催者はプロツアーからの離脱をほのめかし、UCIとの対立が激化しました。最終的には、UCIプロツアーのカレンダーからグランツールを含む複数のレースが除外される事態となりました。

プロツアー制度崩壊の危機

2008年には、複数のチームがプロツアーライセンスを更新しないことを表明し、プロツアー制度崩壊の危機が訪れました。UCIは制度維持を図りましたが、グランツール主催者との対立は解消されず、プロツアーの存在意義が問われる事態となりました。

ワールドカレンダーの創設

UCIとASOとの和解に基づき、2009年シーズンもプロツアー制度は存続しました。また、UCIプロツアー対象レースを含む形で、UCIワールドカレンダーが導入されました。

2011年シーズンより、UCIワールドツアーが創設され、UCIプロツアーは名実ともに消滅しました。

UCIプロツアーは、自転車ロードレース界の改革を目指しましたが、様々な問題に直面し、短命に終わりました。しかし、その理念や試みは、現在のUCIワールドツアーに引き継がれています。

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