Vコード

Vコード（Vcord）とは

Vコードは、1974年に東京芝浦電気（現・東芝）と三洋電機が共同で開発した家庭用ビデオテープレコーダ（VTR）の規格です。1976年には長時間記録に対応したVコードII規格も発表されました。

開発の背景

1970年代初頭、家庭用VTR市場は黎明期にありました。1971年にソニー、松下電器産業、日本ビクターから発売されたU規格は、当時のカラーテレビ普及率の低さや、30万円から50万円という高価格がネックとなり、商業的には成功しませんでした。そのため、各社は独自のVTR規格を開発する動きを見せます。ソニーはベータマックス方式、日本ビクターはVHS方式、松下電器はオートビジョン方式、松下寿電子はVX方式を開発していました。

こうした状況の中、東芝と三洋電機が共同で開発したのがVコード方式です。三洋電機が開発した白黒ポータブル型VTRをベースに、東芝の技術でカラー化されました。1974年6月に共同開発が発表され、同年9月17日に製品が発売されています。

技術的な特徴

Vコードの初期モデルでは、標準モード（STDモード）で30分の録画が可能でした。さらに、映像信号を間引く「フィールドスキップ方式」を採用した長時間モード（LPモード）では、1時間の録画に対応していました。その後、1976年6月には、標準モードで1時間、長時間モードで2時間の録画が可能なVコードIIが発表されました。

しかし、VコードはベータマックスやVHSといった後発の規格に比べると性能面で見劣りする点がありました。そのため、東芝と三洋電機は後にベータ陣営に参画することになります。

Vコードの終焉

ベータマックスとVHSの登場により、Vコードは次第に市場から姿を消します。Vコード方式のVTRはしばらく併売されましたが、1979年頃には販売を終了しました。

Vコード方式の技術詳細

以下にVコード方式の主な技術仕様を示します。

記録方式: ヘリカルスキャン方式
ヘッド構成:
Vコード：回転2ヘッド・フルフィールド記録/再生（標準）
Vコード：回転1ヘッド・スキップフィールド記録/2ヘッド・繰返しフィールド再生（長時間）
VコードII：回転3ヘッド
ヘッドドラム径: 81.3mm
カセットテープサイズ: 156×108×25mm（幅×奥行き×高さ）
テープ幅: 12.65mm（1/2インチ）
テープ送り速度:
Vコード：134.0 mm/s（標準）、
VコードII：73.87 mm/s（標準）
テープヘッド相対速度:
Vコード：7.791m/s（標準）
VコードII：7.73 m/s（標準）
映像SN比: 標準45dB、長時間44dB
音声SN比: 48dB以上
録画時間
Vコード：30分/1時間（標準/長時間）
VコードII：1時間/2時間（標準/長時間）

テープ形状

磁気テープは幅12.65mm（1/2インチ）で、カセット形状は8トラックに近い縦長のサイズです。8トラックとは異なり、カセットの左側面から磁気テープを引き出してローディングする方式を採用しています。

まとめ

Vコードは、1970年代の家庭用VTR黎明期に登場した規格の一つです。東芝と三洋電機が共同で開発しましたが、ベータマックスやVHSといった競合規格の登場により、短期間で市場から姿を消しました。しかし、Vコードの登場は、その後のVTR技術発展に少なからず影響を与えたと言えるでしょう。

参考資料

「VTR産業技術史の考察と現存資料の状況」『国立科学博物館 技術の系統化調査報告』第1集、国立科学博物館 産業技術史資料情報センター、2001年3月28日
Model VTC-8400 Video Cassette Recorder（英語）、SANYO ELECTRIC INC.
『ホームビデオ』（ホビーエレクトロニクスシリーズ）　原正和著　日本放送出版協会　1978年9月　2355-075001-6023

脚注

関連項目
ビデオ戦争

外部リンク
LabGuy's World:1976 Sanyo VTC-8200 V-Cord I/II Color Dual Speed
LabGuy's World:Sanyo VTC-8200 Two Hour V-Cord II VCR Advertising Brochure
VCord II Vintage Video Format History & Description
* VCord II Photo Gallery

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