カンチレバーブレーキ

カンチレバーブレーキ：未舗装路を制す、自転車用ブレーキ

カンチレバーブレーキは、自転車のブレーキシステムの一種です。その名の通り、カンチレバー機構を用いて制動力を発生させます。主にシクロクロスやランドナーなど、未舗装路での走行を想定した自転車に多く用いられてきました。マウンテンバイクでも、Vブレーキが登場する以前は広く採用されていました。

カンチレバーブレーキの特徴

カンチレバーブレーキは、いくつかの利点と欠点を併せ持っています。

利点:

泥詰まりしにくい: ブレーキシューとリムの間に比較的広い隙間があるため、泥や砂利が詰まりにくく、未舗装路での安定した制動力を維持しやすいです。
太いタイヤに対応可能: キャリパーブレーキと比較して、太いタイヤにも対応できます。
高い互換性: Vブレーキに非対応のロードバイク用ブレーキレバーでも使用可能です。
容易な車輪脱着: 車輪を取り外す際に、ブレーキワイヤーを外したり元に戻したりする作業が容易です。

欠点:

制動力の低下と調整の煩雑さ: 長期使用による制動力の低下や、ブレーキ作動のずれが生じやすく、頻繁な調整が必要です。調整作業自体も容易ではありません。
錆びやすい: インナーワイヤーの露出部分が多いため、錆びやすいという弱点があります。
制動力の限界: Vブレーキやディスクブレーキに比べると、根本的な制動力は劣ります。そのため、マウンテンバイクでは主流ではなくなりました。
フレームへの負担: 左右独立したブレーキアーチ構造のため、ブレーキ力と同じだけの反力がフレームにかかります。そのため、軽量なフレームでは十分な制動力が得られず、フレームへの負担も大きくなります。ロードバイクへの採用は少ないです。

カンチレバーブレーキの構造

フロントフォークとシートステイに溶接されたブレーキ台座に、左右独立したブレーキアーチを取り付けます。この台座はVブレーキと共通ですが、リムよりも低い位置に設置されている点がキャリパーブレーキと大きく異なります。

ブレーキアーチの中央部にはブレーキシューが取り付けられ、左右のアーチ上端は「アーチワイヤー」で連結されています。アーチワイヤーの中央にはハンガーヨーク（通称「ちどり」）があり、インナーワイヤーと接続されます。アウターワイヤーはブレーキ本体に直接接続されないため、アウター受けという部品が必要となります。

ブレーキアーチには、ロープロファイル型とワイドプロファイル型の2種類があります。ロープロファイル型は制動力が強い一方、泥詰まりしやすい傾向があります。ワイドプロファイル型は泥詰まりに強いものの、制動力は弱く、ブレーキアーチが足に当たりやすいという欠点があります。

シマノなどのメーカーでは、「ちどり」とアーチワイヤーが一体化されたユニットリンク構造を採用しており、アーチワイヤーの長さ調整が不要になっています。

カンチレバーブレーキの作動原理

ブレーキレバーを引くと、ワイヤーが「ちどり」を介してアーチワイヤーを引っ張ります。アーチワイヤーはブレーキアーチを中央方向に閉じさせ、ブレーキシューがリムを挟み込んで制動力を発生させます。

カンチレバーブレーキの種類とメンテナンス

カンチレバーブレーキは、安価なものから高級なものまで様々な種類があります。安価なものはブレーキシューの角度調整が難しく、メンテナンスが複雑です。一方、高級なものはブレーキシューの取り付け部分がネジ穴になっており、調整が容易で、Vブレーキ用のシューが使用できるものもあります。

まとめ

カンチレバーブレーキは、その独特の構造と特性から、特定の用途に適したブレーキシステムです。利点と欠点を理解した上で、適切な選択を行うことが重要です。近年はディスクブレーキの普及により、その使用頻度は減少していますが、独特の機構と、未舗装路での走行性能は、根強い人気を保っています。

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