VAIO Phone

VAIO Phoneの概要

VAIO Phone（バイオ フォーン）は、台湾のクアンタ・コンピュータによって製造された、第4世代移動通信システムに対応したSIMフリーのAndroidスマートフォンです。日本では初のVAIOブランドのスマートフォンとして、製品番号VA-10Jで知られています。

開発の経緯

このスマートフォンは、VAIOのブランドを利用するために日本通信とVAIOが共同で商品企画を行い、クアンタ・コンピュータに製造を委託しました。性能的にはミッドレンジモデルに位置付けられ、CPUにはSnapdragon 410（1.2GHz）、メモリは2GB、HDディスプレイを搭載しています。オペレーティングシステムはAndroid 5.0 Lollipopですが、AOSPベースでカスタマイズはほとんど行われておらず、シンプルなAndroid体験を提供しています。

特徴と制約

本体には日本通信オリジナルのファイルマネージャーアプリとVAIOオリジナルの壁紙が事前にインストールされていましたが、SIMカードはVAIO Phone専用にIMEIロックが設定されていて、他の端末では使えません。発売当初は日本通信が実質的に商品の販売や企画を主導しており、VAIOはブランドの貸出に留まっていました。

課題と市場の反応

残念ながら、VAIO Phoneは発売が予定より3ヶ月遅れたことが影響し、消費者の期待を大きく裏切る結果となりました。発表時には製品の箱だけが公開され、実際に出てきたのは「VAIO」という名前が付けられた普通のスマートフォンでした。その結果、消費者の失望を招き、商業的には失敗に終わりました。在庫を処分するための減損もしかり、日本通信は2016年度に赤字に転落しました。

日本通信の会長によれば、クアンタはノートパソコンの製造では著名ですが、スマートフォンの製造経験はなく、日本通信はこの実情を見過ごしていたとされています。製造された7万台の中には不具合があった製品もあり、約1万4000台分の受け取りを拒否したことが原因で、クアンタとの間で訴訟問題にも発展しました。

その後のVAIO Phoneシリーズ

VAIO Phoneの失敗を受けて、改良策が講じられました。VAIO Phone Biz以降のVAIO Phoneシリーズは、日本通信とは無関係に、VAIOの安曇野工場にて検品やカスタマイズが行われるようになり、品質が向上しました。これにより、VAIOブランドの信頼性も再構築されることを目指しています。

AIカメラとしての利用

興味深いことに、トライアルカンパニーというスーパーマーケットチェーンでは、VAIO PhoneをカスタマイズしてAI監視カメラとして店舗に導入する試みが行われています。このように、VAIO Phoneは一部の特定の利用用途において新たな役割を果たしています。

市場評価

VAIO Phoneは、初代iMacのように機能ではなくブランドで差別化を図ったものの、消費者には価値が見いだされませんでした。価格は約5万1000円と設定され、それに見合った特徴が不足していたため、ブランド忠実の消費者が幻滅する事態に至りました。その後、価格は大幅に下がり、2018年には1万円程度まで値下げされることとなりました。また、大量の在庫処分が必要だった日本通信は、イオンモバイルで特別価格での販売を実施しました。

リブランド製品疑惑

さらに、VAIO Phoneのデザインや内部設計がパナソニック製のELUGA U2と類似している点から、リブランド製品の疑惑も浮上しましたが、日本通信側はこれを否定しています。価格設定の差異も指摘されており、ブランド名だけで高額になった印象は拭えません。

結局、VAIO Phoneはブランドの名に恥じない品質を追求しきれなかったことにより、ユーザーの期待を裏切る形となり、教訓を得て新たなシリーズは生まれることとなったのです。

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