VIBRA-ROCK

VIBRA-ROCK

『VIBRA-ROCK』（ヴァイブラ・ロック）は、日本のミュージシャンである近田春夫がプロデュースし、自身の率いるバンド、ビブラトーンズによって1982年11月21日に発表されたミニ・アルバムである。レコード形式で発売され、全4曲が収められている。

この作品は、前年の1981年に「近田春夫＆ビブラトーンズ」名義で発表された初のアルバム『ミッドナイト・ピアニスト』からおよそ1年を経て制作された。また、同時期には平山みきのアルバム『鬼ヶ島』（1982年発表）の制作にビブラトーンズが深く関わっており、その活動と並行して本作は生み出された。レコーディング時には、ギタリストの窪田晴男は既にバンドを脱退していた状態であった。

収録曲の一つである「恋の晩だな」は、そのユニークなタイトルが注目される。このタイトルは、1981年9月30日にリリースされ大ヒットした近藤真彦の楽曲「ギンギラギンにさりげなく」（作曲：筒美京平）の歌詞に出てくるフレーズ「恋のバンダナ」を文字通り書き換えたものである。この楽曲の作詞は伊達歩（伊集院静）が手がけており、彼が書いた歌詞の一部を引用し、遊び心を加えてタイトルに採用した点が特異である。

本作のリリース後、ビブラトーンズのメンバー構成に再び変化が生じた。ギタリストの矢野正道がバンドを離れることになったのである。しかし、バンドの活動は止まることなく続けられた。矢野の脱退後、ビブラトーンズは当時ロックバンド「爆風銃」に在籍していたキーボーディストのホッピー神山を新たなメンバーとして迎え入れ、精力的なライブ活動を展開していった。

アルバム発売から約1年後の1983年には、収録曲の一つである「AOR大歓迎」が大手アパレルメーカー、レナウンのテレビCMソングとして採用された。このCMはテレビを通じて広くオンエアされ、楽曲およびバンドの認知度向上に繋がった。しかしながら、ビブラトーンズは本作『VIBRA-ROCK』を発表して以降、新たなオリジナル音源を単独でリリースすることはなかった。

そして、本作発表からおよそ1年後の1984年1月をもって、ビブラトーンズはバンドとしての活動に終止符を打ち、解散した。このため、『VIBRA-ROCK』はビブラトーンズがオリジナル楽曲を発表した最後の作品となっている。

解散から数年を経た1988年10月21日、ビブラトーンズの活動を総括するベスト・アルバム『ビブラトーンズFUN』が発売された。このベスト盤には、デビューアルバム『ミッドナイト・ピアニスト』、本作『VIBRA-ROCK』の全収録曲、シングル曲「金曜日の天使」、さらにこれまで未発表だった楽曲などがまとめて収録された。このアルバムはその後も再発売され、2002年4月20日および2008年8月20日に再び市場に出た。ただし、2008年に再発売された盤においては、なぜか前述のCMソングとなった「AOR大歓迎」が収録されていないという違いが見られる。

『VIBRA-ROCK』は、ビブラトーンズというバンドが最後に残したオリジナル作品として、彼らの多様な音楽性を凝縮した重要な位置を占める一枚と言えるだろう。

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