Versatile Video Coding

Versatile Video Coding (VVC) とは

Versatile Video Coding (VVC) 、またはMPEG-I Part 3とも呼ばれるこの規格は、Joint Video Experts Team (JVET) によって2020年7月に策定された最新の動画圧縮規格です。JVETは、ISO/IEC JTC 1|ISO_IEC JTC 1のMPEGワーキンググループとITU-TのVCEGワーキンググループが統合された専門家チームであり、VVCは時としてFVC（Future Video Coding）やITU-T H.266とも呼ばれてきました。VVCは、High Efficiency Video Coding（HEVC、別名ITU-T H.265またはMPEG-H Part 2）の後継規格にあたり、競合する規格としてはAV1が存在します。

VVCの技術的特徴

従来のH.26xやMPEG動画圧縮規格と同様に、VVCのデータ圧縮アルゴリズムは離散コサイン変換 (DCT) を基盤としています。しかし、以前の規格で用いられていたタイプII DCT (DCT-II) に加えて、VVCではタイプVIII DCT (DCT-VIII) も使用されており、より高度な圧縮技術が導入されています。

VVC開発の背景

2015年8月、MPEGとVCEGは、次世代の動画圧縮標準規格に対する要求を研究するためにJVETを設立しました。新しいアルゴリズムは、同等の視覚的品質を維持しながら、30%から50%の圧縮率向上を目指すことが目標とされました。さらに、ロスレス圧縮（画質の劣化がない圧縮）と主観的ロスレス圧縮（視覚的に画質の劣化がないと認識される圧縮）への対応も求められました。また、4Kから16Kの解像度、そして360度ビデオへの対応も重要な要件として挙げられました。

VVCが対応する要件

VVCは、以下のような幅広い要件に対応することを目指して開発されました。

色空間とフォーマット: YCbCrフォーマット（4:4:4, 4:2:2, 4:2:0）、各成分あたり10bitから16bitのビット深度、広い色域とHDR（ハイダイナミックレンジ）に対応したBT.2100色空間。
補助チャンネル: 深度や透明度などの補助的なデータチャンネルのサポート。
フレームレート: 可変で非整数なフレームレートに対応（0Hzから120Hzまで）。
スケーラビリティ: 時間的（フレームレート）および空間的（解像度）なスケーラビリティ。
画質: SN比（信号対雑音比）の向上、色域とダイナミックレンジの区別。
その他の機能: 3Dステレオ動画、マルチビュー動画、パノラマ動画、静止画像のサポート。

エンコーディングの複雑さと開発プロセス

VVCのエンコーディングの複雑さは、HEVC (H.265) の5～6倍から最大10倍になることが予想されていますが、これは圧縮アルゴリズムの品質に依存します。VVCの標準規格自体は、圧縮アルゴリズムの品質については範囲外としています。

VVCの開発には、VVC Test Model (VTM) が用いられています。VTMはVVCの参照用ソースコードとして機能し、最小限のコーディングツールから開発が始まり、Core Experiments (CEs) でテストされた新たなコーディングツールが追加されていく方式が採用されました。VTMの前身は Joint Exploration Model (JEM) であり、HEVCの開発で用いられた参照用コーデックを基に作られた実験的なコーデックのソースコードです。

VVCの開発経緯

JVETは2017年10月に提案募集を締め切り、標準化作業を正式に開始しました。

2018年4月: VVC標準規格の最初の草案が発行。
2018年IBC: VVCの試作実装が展示され、HEVCよりも40%効率的な動画圧縮能力が示されました。
2020年7月: VVCの最終規格が承認プロセスに入ったことが発表されました。

VVCのスケジュール

2017年10月: 提案募集の締め切り。
2018年4月: 受け取った提案の査定と標準規格の最初の草案。
2019年7月: 委員会草案 (Committee Draft) についての投票。
2019年10月: 国際標準草案 (Draft International Standard) についての投票。
2020年7月: 最終標準規格の完成。
2023年7月18日: 日本では、総務省により『次世代地デジ放送』の仕様策定においてVVCが採用されました。

ライセンスに関する動向

HEVC (H.265) の実装ライセンスで発生した問題のリスクを減らすため、Media Coding Industry Forum (MC-IF) という新しい組織がVVCのために設立されました。しかし、MC-IFは標準化プロセスに対する権限を持っておらず、標準化プロセスは技術的な観点からのみ進められています。

関連規格

H.265 / MPEG-H Part 2 / High Efficiency Video Coding / HEVC
H.264 / MPEG-4 Advanced Video Coding / AVC
H.262 / MPEG-2 Part 2 video

外部リンク

VVC website at the Fraunhofer Heinrich Hertz Institute
Stand by for ITU H.266 compression
Improvement of HEVC Intercoding Mode using multiple transforms
Transform competition for temporal prediction in video coding
Adaptive transforms for inter-predicted residuals in post-HEVC video coding
Future Video Coding

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