Versus (アルバム)

Mr.Children 3rdアルバム『Versus』：ポップとバンドサウンドの融合、そして新たな境地

1993年9月1日、Mr.Childrenの3枚目のオリジナルアルバム『Versus』（ヴァーサス）がリリースされました。前作『Kind of Love』から約9ヶ月ぶりとなる本作は、ポップな楽曲とバンドサウンドを軸とした楽曲が約半数ずつ収録され、聴き応えのある内容となっています。初回限定盤はクリアスリーブ仕様で、歌詞カードも大型サイズという豪華な仕様でした。アートディレクションは、信藤三雄率いるContemporary Productionが担当しています。

創作とレコーディング：異なる環境でのサウンド追求

桜井和寿氏は本作について、「歌だけでなく、楽器の音の必然性も重視した」と語っており、従来のMr.Childrenとは異なる、バンドとしての新たな可能性を追求した作品であることを示唆しています。アルバムタイトル『Versus』には、この対照的な楽曲群と、桜井氏自身の内面にある相反する要素の葛藤が込められています。

レコーディングは、山中湖でのセッションから始まり、都内のスタジオでのプリプロダクションを経て、5曲はニューヨークのウォーター・フロント・スタジオでレコーディングされました。残りの楽曲は、都内のヒルトン東京でレコーディングされたとのことです。ビンテージ機材やアナログテープを使用することで、独特のサウンドが実現しています。

チャート成績とツアー

『Versus』はオリコンチャートで初登場3位を記録し、Mr.Childrenとして初のトップ3入りを果たしました。その後、累計売上は80.2万枚を突破し、日本レコード協会からミリオンセラー認定を受けています。アルバムリリース後には、ホールツアー『'93 Versus Tour』が開催され、多くのファンを魅了しました。マスタリングは前作同様、ボブ・ラドウィック氏が担当しています。

収録楽曲：多様な表現と隠されたエピソード

アルバムには、様々な魅力を持つ楽曲が収録されています。

Another Mind：後にドキュメンタリー映画『Mr.Children / Split The Difference』で演奏されました。
メインストリートに行こう：ライブでの定番曲として長年愛され、『Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ』で20年ぶりに披露されました。
and I close to you：後にシングルカットされた人気曲で、ボビー・ウーマックへのオマージュも込められています。
Replay：3rdシングルとしてリリースされた代表曲。
マーマレード・キッス：山中湖でのセッション中に生まれた楽曲で、遊び心のある発想から生まれた独特の世界観が魅力です。
蜃気楼：山中湖でのセッションで制作され、ニューヨークでレコーディングされました。歌詞には映画のタイトルも引用されています。
逃亡者：鈴木英哉氏がボーカルを担当する、Mr.Childrenにおいて桜井氏以外の作詞作曲による唯一の楽曲。
LOVE：微妙な男女関係を描いた楽曲。サビの展開は山中湖でのセッション中に考案されました。
さよならは夢の中へ：ギターにロータリースピーカーを使用するなど、サウンドにもこだわりが見られます。
my life：歌詞には当時の郵便料金やテレビゲームが登場し、世代特有の感覚が表現されています。

これらの楽曲は、それぞれに異なる魅力を持ち、Mr.Childrenの音楽性の幅広さを示しています。多くの楽曲は、ベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』にも収録されており、現在も高い人気を誇っています。

参加ミュージシャンと制作陣

Mr.Childrenのメンバーに加え、多数のミュージシャンが参加し、アルバムの完成度を高めています。レコーディングには、小林武史氏をはじめ、様々なセッションミュージシャンが参加しています。

『Versus』は、Mr.Childrenの音楽史において重要な位置を占める作品であり、彼らの成長と挑戦を象徴するアルバムと言えるでしょう。様々な要素が凝縮された、聴き応えのある作品です。

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