ボビー・ウーマック

ボビー・ウーマック：ソウル・R&Bの伝説

ボビー・ウーマック（1944年3月4日 - 2014年6月27日）は、アメリカが生んだソウル・R&B界の偉大なシンガーソングライターであり、卓越したギタリストでした。その音楽は、ゴスペルをルーツに持ちながら、ソウル、R&B、ロックなど多様なジャンルを横断し、多くの音楽ファンを魅了しました。2009年には、ロックの殿堂入りを果たし、その音楽的功績が讃えられました。

ゴスペルからR&Bへ：音楽キャリアの幕開け

オハイオ州クリーブランドで生まれたウーマックは、幼い頃から兄弟たちとゴスペルグループ「ウーマック・ブラザーズ」として活動していました。その才能は、伝説的なソウルシンガー、サム・クックに見出され、クックが主宰するレーベル「SAR Records」と契約。1961年には「ウーマック・ブラザーズ」名義でシングルをリリースしますが、ヒットには至りませんでした。その後、「ヴァレンティノス」と改名し、1962年にリリースした「ルッキン・フォー・ア・ラヴ」が初のヒットを記録しました。1964年には「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」を発表。この曲は、ローリング・ストーンズによるカバーバージョンが全英1位を獲得し、ウーマックの名は広く知られるようになりました。

スキャンダル、そして苦難の時代

しかし、順風満帆に見えた彼のキャリアは、サム・クックの死という悲劇、そしてその後のスキャンダルによって暗転します。クックの葬儀に際し、彼の未亡人と結婚したことが大きな批判を浴び、ラジオでのオンエアが激減。活動の場を失ったウーマックは、セッション・ギタリストや作曲家として裏方に回ります。アレサ・フランクリンのアルバムに参加したり、ウィルソン・ピケットに楽曲を提供するなど、地道な活動を続けました。

ソロアーティストとして再起

1968年、ウーマックはソロアーティストとして再起を図り、初のスタジオ・アルバム『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を発表。その後も、「アンド・アイ・ラブ・ハー」「夢のカリフォルニア」「雨に願いを」など、数々のカバー曲を発表し、原曲に匹敵する、あるいは凌駕するほどの高い評価を得ました。また、ジャニス・ジョプリンのアルバム『パール』でアコースティック・ギターを演奏するなど、幅広い音楽活動を展開しました。

70年代、そして80年代：ヒットメーカーとして頂点へ

1972年には、シングル「ウーマンズ・ガッタ・ハヴ・イット」がR&Bチャートで1位を獲得。映画『110番街交差点』のサウンドトラックを手掛け、主題歌も担当。この曲は、後に映画『ジャッキー・ブラウン』でも使用され、再び注目を集めました。1974年には、「ルッキン・フォー・ア・ラヴ」のセルフカバーもR&Bチャートで1位となり、再びトップアーティストの仲間入りを果たしました。

80年代に入ると、1981年のシングル「If You Think You're Lonely Now」がR&Bチャートで3位を記録。『ザ・ポエット』（1981年）、『ザ・ポエット2』（1984年）は、ソウルファンや音楽評論家から絶賛されました。1984年のシングル「Love Has Finally Come at Last」では、パティ・ラベルとデュエットし、再びヒットを記録。ローリング・ストーンズのアルバム『ダーティ・ワーク』（1986年）にもゲスト参加するなど、幅広い活躍を見せました。80年代のウーマックは「ラスト・ソウル・マン」と呼ばれ、その存在感を示しました。

晩年：復活、そして死

1994年には、豪華ゲストを迎えたスタジオ・アルバム『復活』を発表。2012年には、18年ぶりのスタジオ・アルバム『ザ・ブレイベスト・マン・イン・ザ・ユニバース』をリリースし、再び注目を集めました。しかし、2014年6月27日、70歳でこの世を去りました。晩年は癌や糖尿病、アルツハイマー病を患っていたと言われています。

ボビー・ウーマックは、その波乱万丈な人生と、ソウルフルで情感豊かな歌声で、多くの人々に感動を与え続けました。彼の音楽は、これからも時代を超えて愛され続けるでしょう。

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