Vision (ソフトウェア)

Vision（ビジョン）とは

Visionは、1980年代後半から2000年頃にかけて、Apple Macintosh環境で利用されていた音楽制作シーケンサーソフトウェアです。当時「4大シーケンサー」と称された、Performer、Vision、Logic、Cubaseの一つであり、世界中のプロミュージシャンにも愛用者が多くいました。

概要

Visionは当初、MIDIレコーディングと編集機能のみのMIDIシーケンサーソフトとしてリリースされました。その後、ハードディスクの大容量化などの技術進歩に伴い、オーディオレコーディング機能を追加した上位版「Studio Vision」シリーズをリリースしました。

Visionのラインナップは、最上位の「Studio Vision Pro」と、オーディオ録音機能を搭載した「Vision DSP」の2種類があり、それぞれPowerPC専用版と、68k/PowerPC対応版が存在しました。また、一時的にWindows版も開発されましたが、これが後に開発元のOpcode社に混乱をもたらし、ギブソン社による買収、そしてOpcode社終焉の一因になったという見方もあります。

特に「Studio Vision」はDigidesign社との共同開発で、MIDIレコーディングとハードディスクオーディオ録音を実用レベルで統合した画期的な製品でした。これは、今日のDAWソフトの先駆けとも言える存在であり、トーマス・ドルビーのような著名なミュージシャンにも愛用されました。多くのユーザーは、Studio VisionでMIDI編集と基本的なオーディオ録音を行い、ProToolsで高度なオーディオ編集を行うという使い分けをしていました。

開発の終了

開発元のOpcode社はギブソン社に買収され、その後、Visionの開発は1999年に停止しました。ソフトウェア製品の扱いに不慣れなギブソン社の経営が原因とされています。サポート終了後、当時の代理店はVisionからCubaseへの乗り換えキャンペーンを行い、2002年にはVisionシリーズおよび関連ソフトのOMSをフリーウェアとして配布しました。しかし、現在でもVisionのMIDI編集機能に代わるソフトウェアがなく、Mac OS 9環境でVisionを使い続けるユーザーも少なくありません。その復活を望む声も存在します。

特徴

Visionは、MIDIデータの作成・編集において、非常に優れた操作性を持っていました。特に、現在では標準的なエディット画面となったピアノロール画面をいち早く採用し、その完成度は他の追随を許さないほどでした。「Vision」という名称には、「音楽をグラフィカルに視覚的に捉える」という意味合いも込められていました。トラック全体を俯瞰できるブロック状のグラフィカル表示も、Visionの優れた特徴の一つです。また、数値でデータを編集するリストウィンドウも操作性が高く、MIDIデータ作成における完成度は特筆に値します。

Visionでは、99トラックを自由に使うことができ、1つのシーケンスを1曲として完結させるだけでなく、複数のシーケンスで曲を構成したり、サブシーケンスを組み込んだりすることもできました。シーケンスは、キーボードのアルファベットキーに割り当て、任意のタイミングで再生できました。このようなシーケンスを曲のパーツとして扱う機能は、リニアな時間軸にとらわれない楽曲構成を可能にし、偶発的な展開を創作するのに役立ちました。現在ではAbleton Liveなどが、Visionの持つ非時間軸的な曲構成の概念を受け継いでいると言えるでしょう。

関連ソフトウェア

Studio Vision: Visionの上位版で、MIDI編集機能に加え、オーディオ編集機能が統合されました。
EZ Vision: Visionの下位版で、機能が限定されていますが、低価格で販売され、バンドル販売されることもありました。
Galaxy: MIDIパッチエディター、ライブラリアンソフトウェア。ハードシンセサイザーの音色データを効率的に管理できました。
OMS (Open Music System): Mac OS 9環境で標準的に使用されたMIDIドライバソフトウェア。MIDIインターフェースとシーケンスソフトを繋ぐ役割を果たしました。

関連項目

デスクトップミュージック (DTM)
デジタル・オーディオ・ワークステーション (DAW)

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